- アンプティサッカー
アンプティサッカーチーム、関西セッチエストレーラスを訪問
「第7回日本アンプティサッカー選手権大会」終了から一ヶ月も経っていない12月初旬。大阪で開催されていたソーシャルフットボールの大会「スカンビオカップ」の取材を終えたあと、アンプティサッカーチーム「関西セッチエストレーラス」の練習があると聞き、お邪魔させていただきました。
スカンビオカップには友人のYARIMASSE大阪小林耕平選手が出場中。大会終了後の彼を誘い、車に同乗させてもらって移動すること1時間。
大阪の中心からはかなり離れた印象のある一角に「いずみスポーツヴィレッジ」はありました。小高い丘の上にある練習場の周辺には、設備や店舗は一つもなく、遠くに町の灯りが見えるだけの静かな空間です。
大阪にきらめく7つの星
2012年、関西セッチエストレーラス(関西Sete Estrelas)は大阪の地に産声をあげました。全国に8つあるアンプティサッカーチームの中でも比較的歴史が古い方に入ります。
チーム名にある「Sete」はポルトガル語で「7」「Estrelas」は「恒星」を意味し「7つの星」という意味になります。
毎年5月に大阪で開催される「レオピン杯コパ・アンプティ」ではホスト役として運営に関わり、また大阪周辺の地域へ赴いて積極的に体験会や講演会を開催。また健常者も参加できるアンプティサッカー大会「セッチカップ」の開催など、西日本のアンプティサッカー普及にも積極的に取り組んでいます。
所属選手は12名(2017年11月現在)。GK2名、FP10名で構成されています。
中でもチームキャプテン冨岡幸男選手と川西健太選手は、2017年6月にポーランドで開催された国際大会に日本選抜として出場。日本の3位入賞に大きく貢献しました。
国際大会の様子はこちらで。
選手層も厚く、優勝独占中のFCアウボラーダとFC九州バイラオールの2チームに割って入る存在です。
前述の川西選手をはじめ10代の選手も多く、昨年の日本選手権では、アンプティサッカーを始めて半年も満たない中学2年の近藤碧選手が初出場。新人優秀賞を受賞する活躍を見せ度肝を抜きました。未だ無冠とは信じがたいほどのポテンシャルを秘めたチームなのです。
基礎練習スタート!
ピッチに灯りが入って間も無く、今日の練習に参加する選手たちが各々会場に集まり始めました。年末に差し掛かった時期ということもあり、この日集まった選手はやや少なめでした。辻龍典選手、川西健太選手、近藤碧選手、川村大聖選手、福留義弘選手の5名。そして助っ人の小学生たちが数名と、監督をはじめスタッフ陣5名。川西選手のお母様にもご挨拶することができました。
人数は少なくても、練習はきっちり。静寂が包むその中で、選手たちはゆっくりとウォーミングアップします。軽いジョグから始まり、左右反復、前後反復。そしてボールを使った練習。吉田和樹監督の号令とともに、小気味よく体を動かす選手たち。
小林選手も自己紹介後、早速クラッチを借り、練習に加わりました。この日、アンプティサッカーを初めて見たという小林選手。クラッチを持つ手もぎこちなく、扱いには苦慮していました。
しかし、彼はソーシャルフットボール(精神障がい者フットサル)日本代表選手。さすがに慣れるのも早い。「これ意外とイケるんちゃう?」
アップが終わると、ボールを使った練習が始まります。対面パス、グラウンダー、ロング。さすが、澱みなく受け渡されるボール。
パラキートも練習に参加しましたが、寒さで手はかじかみ、カメラはすぐにバッテリーが上がる状態だったので、程なくして撮影に徹することに。選手たちと年齢が近い小林選手は、積極的にコミュニケーションを図っていました。ソーシャルフットボール日本代表とアンプティサッカー日本代表同士のワンショット。
近藤選手ともFリーグの話で盛り上がっていたようです。若いっていいねw
極寒のコートでも選手の気持ちは熱い
そして、実戦的練習がスタート。1vs2の彼らのテクニックを間近で見ることができます。攻守に分かれての競り合い、せめぎ合いをひたすら続けます。身体の大きな川村選手とスピード感のある福留選手のマッチアップ。
攻守入れ替えて再びチェイス!
川村選手vs辻選手。守備的な選手同士のマッチアップも迫力。
若きエース川西健太選手vs日本選手権で旋風を巻き起こした、近藤碧選手。若いですが、見応えのあるマッチアップです。
辻選手と近藤選手。練習とはいえ、手加減はしません。
すり抜け、冷静にゴールへボールを流しこむ近藤選手。
助っ人とのマッチアップ。同年代対決は力が入ります。
小林選手、アンプティサッカー選手に挑戦!
一方そのころ、我らが小林選手はクラッチの扱いのコツをつかみ、選手たちともコミュニケーションを取る余裕も見せ始めていました。しばらく対人戦を見ていた彼も、「いっちょやってみるわ」と颯爽と対人練習に加わります。
まずはvs福留選手。スピードに乗る福留選手と対峙し、間合いを詰めるも…。
クイッ
キュッキュッ、シュッ!軽くいなされ終了。フェイントには全くついていけませんでした。
vs川西選手では、そもそも対峙すらできず。そのスピードで振り切られます。
近藤選手にも挑みますが、のれんに腕押し、ぬかに釘。
少年にもぶち抜かれ、万事休す。ご愁傷様でした。
自信喪失気味の小林選手。でも面白かったようです。翌日、日本代表セレクションを控えていた彼にはちょっと酷だったかな?(それでも選出されるあたりはさすが)
そしてゲーム形式の練習が始まります。クラッチ組とクラッチ無し組とに分かれて紅白戦。クラッチ無し組は吉田監督やコーチ陣、そして少年たち。
ゲームが途切れると周囲から「休むな、ほらどんどん行くぞ!」の檄が飛びます。
クラッチなし組は終始押されっぱなし。クラッチ組はその間合いの広さを生かして、ゲームを有利に進めます。
川西選手はこの日もキレキレ、大会で見せた切れ味を遺憾無く発揮していました。
それは近藤選手も同じでした。体全体を使って相手を大きく揺さぶり、タイミングを見て鮮やかに抜き去ります。
もともと小学生の頃からサッカーをしていた近藤選手は、事故で左足を切断。サッカー選手の夢を絶たれてほどなくアンプティサッカーと出会いました。
それまで塞ぎ込みがちだった彼も、アンプティサッカーを始めるとクラッチにもすぐに慣れ、トップフォームでプレイできるようになるまで、さほど時間はかからなかったようです。
こうして、練習時間終了間際まで彼らはボールを追いかけ続けました。準決勝のPK戦で敗れ、失意のうちに大会を去った日本選手権から1カ月足らず。練習場には笑い声も響きましたが、どこかストイックな、緊張したような空気を感じました。
練習終了後、川西選手の大学合格が報告され、チーム全体で祝福。そういえば日本選手権の初戦と入試日と重なったため、川西選手は初戦を欠場、チームは彼の分も走り続け、次の試合に繋いだのでした。改めて合格おめでとうございます。
チーム創設以来の悲願である、公式戦初タイトルを目指して戦う関西セッチエストレーラス。今週末開催のレオピン杯は、地元の利を最大限に生かして大会に臨みます。地元の声援を受けて、あの熱い試合を再び見せて欲しいです。
関西セッチエストレーラスのみなさま、取材同行・協力してくださったYARIMASSE大阪、小林選手。寒い中、ありがとうございました!!
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関西セッチエストレーラス、YARIMASS大阪の情報はこちら↓
大阪 高槻 精神障がい者によるフットサルチーム|YARIMASSE OSAKAオフィシャルウェブサイト – 大阪,高槻の精神障がい者によるフットサルチーム
(了)
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