優勝の行方は〜第4回レオピンカップ観戦記⑧

  • アンプティサッカー

 

初戴冠か王者奪還か。運命の決勝戦

第一回レオピン杯 優勝:FC九州バイラオール/準優勝:関西セッチエストレーラス 

第二回レオピン杯 優勝:FCアウボラーダ川崎/準優勝:FC九州バイラオール

第三回レオピン杯 優勝:FC九州バイラオール/準優勝:FCアウボラーダ

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第一回日本選手権 優勝:FCガサルス/準優勝:FC九州バイラオール

第二回日本選手権 優勝:FCガサルス/準優勝:FC九州バイラオール

第三回日本選手権 優勝:FC九州バイラオール/準優勝:FCガサルス

第四回日本選手権 優勝:FCアウボラーダ川崎/準優勝:FC九州バイラオール

第五回日本選手権 優勝:FC九州バイラオール/準優勝:FCアウボラーダ川崎

第六回日本選手権 優勝:FCアウボラーダ/準優勝:FC九州バイラオール

日本アンプティサッカー界の歴史は、創成期から2チームが覇権を分かつ歴史でもありました。2014年から始まったレオピン杯第一回大会を除き、FCアウボラーダ(FCガサルスはFCアウボラーダの前身)とFC九州バイラオール以外のチームは、決勝の舞台に立ったことがありません。そう、この1チームを除いては。

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関西セッチ・エストレーラス。2012年に発足して以来、先に発足したFC九州バイラオール、翌年発足のアフィーレ広島AFCと共に、関西のアンプティサッカー界を牽引する存在です。その関西セッチエストレーラスが、第一回レオピン杯以来となる決勝の舞台に立ちました。迎え撃つのは2強の一翼、FCアウボラーダ。

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日本にアンプティサッカーを伝えたエンヒッキ・松茂良・ジアス選手をはじめ、日本代表選手も多く在籍する、疑うことなき国内トップチームです。すべてのチームが、この青いユニフォームを超えることを目標に活動を続けてきました。歴史は塗り替えられるのか、それとも繰り返されるのか。注目の大一番が今、始まります!

FIFAアンセムが高らかに鳴り響き、フェアプレイ旗に招き入れられるように両者が入場。会場は拍手と歓声に包まれました。

f:id:okina_monkparakeet:20170625211751j:plain関西セッチ・エストレーラスはベストメンバーを連ねてきました。対するFCアウボラーダはキャプテンを14#遠藤選手から10#エンヒッキ選手へ変更。スタメンに13#西條選手が入ります。関西セッチ・エストレーラスの要は5#田中選手。攻守にわたって豊富な運動量で動き続け、前線には効果的なパスを供給。FCアウボラーダはなんといっても10#エンヒッキ選手。彼を止めることができるかが鍵になります。前半

FCアウボラーダは守備的な選手も積極的に攻撃参加するのが特徴。キックオフ直後、2#新井選手と6#細谷選手が持ち上がっていくことで全体的に相手を押し込んでいくFCアウボラーダ。6#細谷選手はサイドを駆け上がるなど攻撃にアクセントを加えます。

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開始2分の10#エンヒッキ選手のファーストシュートを皮切りに、FCアウボラーダのペースで試合が進んでいきますが、関西セッチは全く慌てません。5#田中選手が攻撃を遅らせ、17#飯倉、18#川村選手が跳ね返し、前線の3人で縦に素早いカウンターを仕掛けます。

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関西セッチははっきりした守備。対するFCアウボラーダは早いチェック。両チームとも高い守備力で、容易にフィニッシュまで持ち込ませません。14#遠藤選手は中盤でゲームを落ち着かせ、同じ役割の5#田中選手と競り合う場面も。

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最初の見せ場は前半5分。10#エンヒッキ選手が相手ペナルティエリア前で3人の選手をひきつけると、ゴール前で一人ぽっかりとフリーになった13#西條選手へパス。ボールは3人の間をすり抜けていきます。

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GKと1対1になる絶体絶命のピンチに、身を投げ出したのは5#田中選手。23#北波選手はなんとかボールをはじき出し、事無きを得ました。

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一方の関西セッチのチャンスは前半8分。FCアウボラーダが味方に当てるミスキックを、25#川西選手は逃さずチャンスにつなげます。

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そのままダイレクトに俊足19#冨岡選手へ託すと、迷わず駆け抜けた19#冨岡選手はGKと1対1に。このピンチはGK1#長野選手のナイスセーブと、素早く戻ってきた2#新井選手の守備でしのぎます。

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前半10分には、関西セッチのCKを奪ったFCアウボラーダのカウンター!今度は10#エンヒッキ選手がGKと1対1に。誰もが1点!と思った場面でしたが、粘って最後まで動かなかったGK23#北波選手に軍配が上がりました。決勝にふさわしい、迫力のある攻防が続きます。

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前半12分の給水タイムを経て、その後もFCアウボラーダのペース。さすがに押し込まれ始め他関西セッチ。11#岩崎選手らに何度もシュートを浴びますが、その度にはじき返していきます。

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前半16分すぎにはGK23#北波選手が立て続けのビッグセーブ!なかなかゴールを割れないFCアウボラーダ。前半18分、その関西セッチが逆襲します。10#エンヒッキ選手のFKをしのぐとそのまま猛スピードのロングカウンター。

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19#冨岡選手が渾身の走りを見せ、25#川西選手がフィニッシュまで持ち込むも、GK1#長野選手がかろうじて防ぎます。

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その後も両者の攻防は続きます。前半20分にはCKから9#秋葉選手の惜しいシュート。

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前半23分には25#川西選手が落としたボールを…

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7#福留選手がシュート!これは枠を捉えません。

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息をもつかせぬ試合展開。これぞ決勝!!という前半は、スコアレスのまま終了。勝利の行方は全く予想がつきません。

後半関西セッチは後半開始から18#川村選手に代わり、同じく守備的な8#辻選手を投入。FCアウボラーダに比べて選手層の薄い関西セッチは、選手のやりくりも慎重です。

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前半と同様、緩急つけた攻めで隙を窺うFCアウボラーダと、カウンターで応酬する関西セッチ。

すると後半3分、ついに試合の均衡が崩れます。10#エンヒッキ選手が前目で受けたパスを変化をつけたドリブルで持ち込みます。

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それまで、シュートレンジの10#エンヒッキ選手に対しては2〜3人で対応していた関西セッチでしたが、この時ディフェンスは1人のみ。それを振り切ってシュート!これがゴールに突き刺さり、FCアウボラーダが先制します!

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駆け寄る仲間たち、そしてクラッチを高々と掲げる10#エンヒッキ選手。しかし決勝の酸いも甘いも知る彼にはまだ笑顔はありません。その姿は日本選手権の先制時を思い起こさせます。

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ビハインドを負った関西セッチは、優勝のためにはこれ以上の失点は絶対に避けなくてはなりません。複数で抑えにかかる関西セッチ守備陣の徹底マークに、10#エンヒッキ選手は苛立ちをあらわに。

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そして、関西セッチの必死の守備が実を結びます。失点のわずか1分後、GK23#北波選手のパントキックは、あやまたず25#川西選手の元へ。2#新井選手が追いすがるも、25#川西選手が難しい浮き球をアウトサイドでダイレクトボレー。これには1#長野選手も見送るしかありませんでした。

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抱き合って喜ぶ25#川西、10#冨岡選手。関西セッチ、FCアウボラーダの好きにはさせません。

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ゲームが振り出しに戻ったあとの給水タイム。精神的にも疲れが溜まってきます。

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その後、ゴール前まで持ち上がるも、互いに決定機を作りきれないまま時間が過ぎていきます。11#岩崎選手が強烈なシュートを放つも、GK23#北波がこれを許しません。

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14#遠藤選手は高いプレス能力で関西セッチを押さえ込もうとします。

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手がつけられないほどの技術力を見せる10#エンヒッキ選手。17#飯倉選手が食らいついていきます。

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準決勝までと違い、プレイタイムは25分ハーフ。日が傾き、落ちる影も長くなるにつれ、だんだんと疲労の度合いも濃くなってきました。守備も半歩遅れ、ファウルの数も増加。

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このまま延長突入も頭をよぎり始めた頃、再び試合が動きました。カウンターを仕掛けた25#川西、19#冨岡選手のほんの少しの連携のズレを、ベテラン2#新井選手は見逃しませんでした。ボールをかっさらうとそのまま前線へ持ち上がり、左サイドに開く10#エンヒッキ選手へラストパス。

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カウンターで前のめりになっていた関西セッチ陣営は守備の人数が足りません。再び10#エンヒッキ選手がその足を一閃!!懸命に足を伸ばす17#飯倉選手!

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しかし、絶妙にコントロールされたボールはGK23#北波選手の脇をすり抜け、ゴールネットに突き刺さります。時間は後半21分。1点目と同じシチュエーションで、かつかなり苦しい時間帯での失点だけに、二人はしばらく立ち上がれませんでした。

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残り4分で追いつかなければならなくなった関西セッチ。その焦りを察してか、ボールをうまくキープしながら、時間を稼ぐFCアウボラーダ。関西セッチのチャンスはその直後。センターサークル付近で獲得したFKを25#川西選手が蹴り込みます。ボールは枠をとらえますが、GK#1長野選手がゴールをきっちり守ります。1点をとれば…その1点を狙って気力を振り絞る関西セッチ。

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アディショナルタイムは3分。8#高橋選手が鉄壁の守備を見せ、それに呼応するようにFCアウボラーダの選手もチェイシングをかけていきます。それでも攻めつづける関西セッチ。

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後半27分。5#田中選手が絶妙なクロスをあげるも、18#冨岡選手がすらしたボールはゴールポストのわずかボール一個分のところをすり抜けていきます!悲鳴とため息が混じったような声が観客席から沸き起こります。

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FCアウボラーダにとっては永遠にも感じるような残り1分。体を投げ打って、ボールを追い、1点を信じて攻め続ける関西セッチの選手たち!必死で守るFCアウボラーダ陣営!

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そして。ピッチに響き渡る無情のホイッスル!

FCアウボラーダ、追いすがる関西セッチを退けて2年ぶりの優勝。関西セッチの高いパフォーマンスに幾度も苦しみながら、最終的にはその勝負強さを見せつけました。

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一方で、あと少しで手が届いた初タイトルが目の前ですり抜けていく現実を前に、関西セッチの選手たちは崩れ落ち、呆然と佇み、一歩も動けません。

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歴史を変えようと挑んだ関西セッチ・エストレーラス。それを王者の威光で退けたFCアウボラーダ。死闘が終わり、互いに健闘を称え合う両者。勝者は浮かれる事なく、敗者は妬む事なく。普段からチームを超えて仲の良い選手たちだからこそ、互いをリスペクトするその姿は胸打たれるものがありました。

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悲哀と歓喜のコントラスト。

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死闘とも言える50分間が過ぎ去り、いつまでも浸っていたいような、早く次に進みたいような、なんとも言えない余韻がそこには残ります。これらすべてがアンプティサッカーの魅力なのかもしれません。

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…さて…MPPなどと称してせっかくの好ゲームに水を差すのも如何なものかと思いますが…炎上覚悟で初志貫徹、やります!この試合で印象に残ったのは守備的な2人の選手。FCアウボラーダは決勝点の立役者となった2#新井選手。関西セッチ・エストレーラスは前線の選手たちが安心して攻撃できるよう、献身的な守備を見せた17#飯倉選手です。すべての大会の日程が終わり、慌ただしく片付けられていく会場。すっかり傾いた日の光は、二日間の激闘を終えた選手たちの安堵の表情を照らし出していました。

⑨へ続く

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「パラキートのパラスポーツ日記」では、一人の障害者サッカーファン「パラキート」が自分の脚でおもむき、自分の目で観て、自分の耳で捉え、自分の指で撮り、自分の頭で考えたママを発信していきます。

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『"Pick"=掴み取る、選ぶ」と「"Phat"=格好いい、イカした』を組み合わせた造語を屋号に掲げる「PickPhat」。クライアントの意思を尊重し、選び抜いてイカしたサイトをクライアントと共に作り上げます。代表の加藤高明氏は電動車椅子サッカーチーム「Yokohama BayDream」の選手としても活躍中。

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