ナショナルダービー!〜第4回レオピンカップ観戦記⑥

  • アンプティサッカー

2強、相見える準決勝!!

例年とは少し違う風景がそこにはありました。レオピン杯では第一回大会を除いて、そして日本選手権では全ての大会で、常に決勝戦の舞台で顔を合わせてきた両者。しかし、この日は準決勝での顔合わせ。日本アンプティサッカー界のナショナルダービーが今、始まります。

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昨年の日本選手権では延長の末敗れたFC九州バイラオール。相性の良いレオピン杯では負けるわけにはいきません。一方、レオピン杯では九州バイラオールに負け越しているFCアウボラーダも、気持ちの入り方が違います。f:id:okina_monkparakeet:20170613234452j:plain

前半キックオフ直後から九州バイラオールが挨拶代わりの一発を披露します。GK1#東選手からのロングフィード11#星川選手が絶妙なトラップ。そして振り向きざまに強烈なボレーシュートを放ちます。これはバーを叩きますが、FCアウボラーダをひやりとさせます。

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FCアウボラーダもすぐに反撃。10#エンヒッキ選手のCKを8#高橋選手がミドルシュート。しかしこれは枠をそれていきます。

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FCアウボラーダは10#エンヒッキ選手、6#細谷選手などがドリブルで駆けあがり、セットプレイを得るも、得点には結びつかず。逆にそのセカンドボールを奪う九州バイラオールが、巧みなコンビネーションから鋭いカウンターを繰り出します。

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高い位置からの早いチェックでボールをインターセプトしていく九州バイラオール。その先鋒を担うのは主将の7#加藤選手。九州バイラオールは、FCアウボラーダの選手にボールが入るとすぐにチェックに行き、なかなか前を向かせません。

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FCアウボラーダも2#新井選手を中心に、九州バイラオールの前線にボールを入れさせません。特に10#萱島選手に対しては執拗なまでのマーク!互いにチャンスを生み出せないまま時間が過ぎていきます。

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自身のクラッチが吹っ飛んでも食らいつくベテラン2#新井選手の守備!

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前半2分には10#エンヒッキ選手のキックインがそのままゴールネットを揺らしますが、アンプティサッカーはキックインからの直接ゴールは得点になりません。前線にボールが渡れば、FCアウボラーダは2#新井選手、バイラオールは8#上中選手が、それを潰す。互いを知り尽くした両者の、息詰まるせめぎ合いが続きます。しつこく食らいついていく8#上中選手!

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身体を張った守備が光る2#新井選手!

f:id:okina_monkparakeet:20170616201139j:plain予選リーグでは得点に必ず絡んでいた10#エンヒッキ選手も、この日は6#松田選手や10#萱島選手のチェックに気圧され、リズムがつかめません。

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一方、ボールを回せない九州バイラオールも、頼みのGK1#東選手の正確なフィードを封じられ、前半10分を終えてここまで互いにチャンスは1度ずつあったか、といったところ。完全にこう着状態です。

f:id:okina_monkparakeet:20170616224858j:plain8#加藤選手も、焦りからか14#遠藤選手へチャージ、イエローカードを受けてしまいます。

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エンヒッキ選手と度々マッチアップした10#萱島選手。迫力のある守備を見せます。

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前半終了間際、7#加藤選手のキックインにアクロバティックなバイシクルで合わせる11#星川選手ですが、これもGK18#平賀選手が必死に掻き出し、得点ならず。

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九州バイラオールはカウンターで幾度かシュートまで持ち込むも、枠を捕らえきれず、そのまま前半終了。まさに意地の張り合い、互いの持ち味を消し合うような前半となりました。後半後半もFCアウボラーダは慎重な立ち上がり。14#遠藤選手が後半最初のシュートを放つと、九州バイラオールもキレのあるカウンターを繰り出し、互いに早い時間にシュートを記録します。しかしその後は前半と同じく、互いに潰し合うような試合展開に。

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後半から変わって入った9#秋葉選手も健闘しますが、やはりチャンスを作れません。

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10番同士のマッチアップも繰り広げられました。日本代表同士、どちらも譲りません。

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エンヒッキvs萱島、かなり見応えのある1vs1。

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突破されても食らいつく、これがエース同士のマッチアップか!

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パラキートも試合観戦に熱が入ったせいか、この後しばらくシャッタースピードを間違えてカメラを連写!!(おかげでスピード感のある写真になりましたw)

前半7分には8#上中選手のクラッチにボールが当たりハンドの宣告。10#エンヒッキ選手が蹴ったフリーキックは枠の外へ。

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10#萱島選手も時折オーバーラップを見せ、その素早さで相手DF陣を切り裂いていきます。

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11#星川選手も、再びオーバーヘッドキックをみせますが、これはハイキックの反則を取られてしまいます。その直後、うまくGKのタイミングを読んで、コントロールシュートを放ちますが、前半のシュート同様ゴールポストを叩いてしまいます。

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高い決定力を誇る10#萱島選手は、試合が進むにつれて守備的なポジションへ。変わって攻撃力を発揮したのが11#星川選手。凄まじい気迫で駆け上がり、チャンスをつくために縦横無尽に走り回ります。

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それでも点は動かず、そのまま後半アディショナルタイムへ突入!昨秋の日本選手権決勝&昨年のレオピン杯でフルタイムで決着のつかなかった両者。今回も決着はつかないままなのか!?死力を尽くして残り時間を戦う両者!

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最後のチャンスとばかりに14#遠藤選手がけり込んだロングシュートが、10#エンヒッキ選手がコースを変えるも、枠を外れていきました…。

そしてここで長い笛が!意地の張り合い、ぶつかり合いになったダービーマッチ。3試合連続となった引き分けその試合の行方はPK戦に委ねられることになりました。

運命のPK戦は劇的な結末に

PK戦はFCアウボラーダの先行でスタート。ゴールを守るのは、バイラオールはGK東選手、そしてFCアウボラーダはGK18#平賀選手です。PK戦においては、「勝負はPK戦のみ」という一風変わった大会「蹴-1GP」へコンスタントに参加しているFC九州バイラオールに分があるか…?

FCアウボラーダの1人目は10#エンヒッキ選手。

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しっかりボールを見据えるGK1#東選手。

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身体をしならせて…シュート!

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反応したGK1#東選手の脇を抜けて、しっかりとゴール右隅へ。責任がかかる最初のPKキッカーという重責を終えて、GK18#平賀選手と抱擁を交わします。

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対する後攻。バイラオール1人目、10#萱島選手も難なく決めて同点。 

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そしてFCアウボラーダ2人目となる8#高橋選手。しかし放ったシュートは無情にもゴールの枠外へ…!どよめく観客席!

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うなだれる8#高橋選手。GK18#平賀選手に祈りを込めます。

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失意の8#高橋選手を尻目に、九州バイラオール2人目、9#野間口選手がボールをセット。これを決めれば、バイラオールは決勝に限りなく近づきます。

f:id:okina_monkparakeet:20170616233209j:plain渾身の力を込めて放つシュート!しかし、そのボールを18#平賀選手、横っ飛びでナイスセーブ! 8#高橋選手の失敗をしっかりフォローします!

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…ところが…!!!!なんとホイッスル前にわずかに飛び出しが早かったため、やり直し&イエローカードに!これにはがっくりうなだれる18#平賀選手。とんでもない展開になってきました。

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気を取り直し、再び位置につく両選手。そして再び9#野間口選手が蹴り込んだシュートに、再び食らいつく18#平賀選手!!!必死に延ばした左手は再びボールに触れ、ボールは大きく弾かれていきます。

f:id:okina_monkparakeet:20170616233933j:plain18#平賀選手、再び止めた!!仲間の見守るベンチを見やると、静かに拳を小さく突き上げます。これには完敗と言った感じの9#野間口選手、苦笑いの表情で引き上げていきます。

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振り出しに戻ったPK戦は、その後互いに順調にシュートを決めていきます。6#細谷選手。

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11#星川選手。

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13#途中出場の西條選手。

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キャプテン7#加藤選手。

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FCアウボラーダ5人目は2#新井選手。PKスポットにボールをゆっくりセットすると、ちょこんと小さなお辞儀。ボールを正視せず、ただ祈るGK18#平賀選手。

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放たれたシュートは確実に枠をとらえます。

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そして対する九州バイラオールの5人目は、6#松田選手。ここで決めればサドンデス、外せばFCアウボラーダの勝利。静かにボールに歩み寄ります。

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GK1#東選手が見守る中、シュートモーションに入ります。

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そして、放たれたボールはゴール左隅に一直線…!

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そして横っ飛びする18#平賀選手!! 延命に手を伸ばす!

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ボールの行方は…!?

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短く鳴り響く2回のホイッスル。と同時にベンチを飛び出してくる控えメンバーと、見守っていたPKキッカーたち。6#松田選手のボールは、ネットを揺らすことなく、転がっていきます。18#平賀選手の渾身のセービングが、チームに勝利をもたらしたのです。

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雄叫ぶ18#平賀選手!!歓喜が爆発します!!

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選手たちが次々と駆け寄り、18#平賀選手はもみくちゃに。そして、その様子を1#東選手がずっと見つめ続けていました。まるで心に刻みつけるかのように。

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九州バイラオールのメンバーはその様子を見ることなく、互いを労います。ただうなだれるばかりの6#松田選手にも、選手たちが代わる代わると手を差し伸べていきます。弱冠17歳にして存在感を見せた大舞台。ベテランたちの「よくやったよ、お疲れさん」と聞こえてくるようでした。

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FCアウボラーダは日本選手権に続いて今大会でもバイラオールに勝利。対するバイラオールは、決勝の舞台を踏むことはありませんでした。ただ、日本選手権で見せた涙はそこにはなく、どことなく試合が終わった安堵感と諦めの感情がないまぜになったような、なんとも言えない表情をみせていました。試合前、どこからともなく「相手はバイラだぞ!楽しんでやろう!」の掛け声が上がっていたFCアウボラーダ。ケガ人の影響もあり、また選手数の少ない九州バイラオールにとって、もしかしすると予見されていた結果だったのかもしれません。ともあれ、素晴らしい試合を見せてくれた両者に、観客席からも大きな拍手が沸き起こっていました。

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この試合のMPPは、FCアウボラーダはGK18#平賀智行選手。PK戦での素晴らしい反応のみならず、試合中のセービングも素晴らしいものでした。FC九州バイラオールは11#星川誠選手。果敢にアウボラーダ陣営に攻め入り、高いテクニックの片鱗を見せつけました。準決勝2試合が終了し、決勝戦の組み合わせはFCアウボラーダ対関西セッチエストレーラスに決定しました。初優勝がかかり勢いに乗る関西セッチエストレーラスを、FCアウボラーダが阻止できるのか、見逃せない決勝戦になりそうです。次は3,4位決定戦、5,6位決定戦です。今大会も残り3試合。いよいよ最終順位を決める戦いが始まります。

⑦へ続く

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『"Pick"=掴み取る、選ぶ」と「"Phat"=格好いい、イカした』を組み合わせた造語を屋号に掲げる「PickPhat」。クライアントの意思を尊重し、選び抜いてイカしたサイトをクライアントと共に作り上げます。代表の加藤高明氏は電動車椅子サッカーチーム「Yokohama BayDream」の選手としても活躍中。

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