- サッカーの現場から
天に祈りが通じた最終日
大会3日目、午前9時。
ぐずついた天候が続いた大会も、最終日にして青空が広がりました。絶好のサッカー日和に、参加者たちはスタートを待ちきれません。
「熱中症に気をつけて、ちゃんと水分を摂って、今日も1日楽しみましょう!」幸子さんの元気なかけ声で、アミザーデサッカー大会最終日、スタートです!
リスペクトにあふれたサッカー大会
3日目は1日目と同様に「フレンドリーマッチ」。今日は富山第一高校の女子サッカー部の皆さんも選手として参加します。初日は地域ごと知ったもの同士でチームを作りましたが、今日は「初めまして」も「また会ったね」も全てがごちゃ混ぜです。
第一試合、スタートの掛け声とともに、参加者は一斉に駆け出しました。優勝がかかっているので、みんな真剣。でもすぐに笑いが溢れます。
ゴールが決まれば称え合い、負ければ慰め合う。年齢や立場は関係なく、等しくサッカーを楽しんでいます。
みんなが楽しみたいから、親子でもチームメイト同士でも、相手にはリスペクトを持って挑みます。「手加減はしても、手抜きはしない」それがアミザーデの作法。
介助が必要なテラさんには、二人が手足となってサポート。一緒に楽しむためにちょっと手伝う。そんなゆるい感覚で、気がつけば誰かが駆け寄ってしていたりします。
でも手抜きは無しなので、容赦なく奪われるボール(笑)。
ゴールマウスを守るのは、PALRABOXに所属するペイさん。普段は松葉杖を使い、倒れると自力では起き上がるのに時間を要するペイさんも、必要になれば誰かが支えます。起き上がるまでプレーを止めたりする配慮も。でもシュートは全力です。
知的障害や自閉症でうまく集団に溶け込めないチームメイトへも、周囲が積極的に誘いかけます。
誰もが全力で楽しむ。それがこの大会のルールです。
子供たちも扱いは大人と同じ。ぶつかっては謝り、相手を倒しては引き起す。彼らはサッカーを通じて「他人への配慮」を身を以て経験し、身につけていきます。
浅井さんの言葉を借りると「理想的な社会の縮図」が垣間見れる大会、それがアミザーデの本質かもしれません。
誰もがみんなをおもてなし。混ざり合うひととき
最終日も、アミザーデのホスピタリティは全開。試合開始前、チームの番号が貼られたバケツが各チームに配布されます。中には冷たいスポーツドリンクがぎっしり。参加者が見分けられるように、目印の数字のタグがついています。
ボランティアの女子サッカー部員の皆さんが時折やってきて、バケツを回収。
そして戻ってきたバケツの中に入れたボトル一つ一つに、新しいスポーツドリンクが満たされていました。
容器はリサイクルし、中身だけを補充して再びチームに戻してくれていました。これにはただただ驚き、そして頭が下がる思いでした。そしてその美味しさと言ったら!
でも、この大会はゲストもホストも混ざり合うのが本来の姿。その場にいる全員で、大会を作っていきます。この日の昼食はカレー。寸胴に大量に仕込まれたカレーは、朝から走り回った参加者たちのお腹を満たします。福神漬け、らっきょももちろん用意されていました。
おやつタイムにはアイスクリームが配られました。アイスクリームがダメな人には別のものも用意されています。
涼をとる参加者の前に、元気な一群が走りこんできました。富山チアリーディングチーム「puppys」の皆さんです。
puppysは国内&海外の大会でも優勝実績のある、国内屈指のチアリーディングチーム。息のあったチームワークに、一同目が釘付けです。
華やかな演技にしばし魅了されていると、彼女たちが参加者に歩み寄り、その腕をとって輪の中へと誘い混みます。そして始まる、素敵なショータイム!
浅井さんも輪の中へ。この会場全てがステージ、恥ずかしがったらもったいない!
ボランティアも参加者も関係なくこの場を楽しむ、それはまさに夢の時間。魔法にかけられたかのように、そこにいる全ての人が笑顔になっていました。
豪華な顔ぶれ!白熱のレジェンドマッチ!
大会はいよいよクライマックス。最後のプログラムを残すのみとなりました。「アミザーデ・レジェンドマッチ」発足当初から大会を支えるメンバーによるスペシャルマッチです。この少し前、会場に一人の男性が到着していました。「遅れてきた男(自称)」、それは水沼貴史さん。サッカー元日本代表として、またJチームの指導者として活躍してきた、文字通りのレジェンドです。
水沼さんは2009年、知己の間柄だった大橋選手の誘いに応じてアミザーデサッカー大会に参加。以来、毎年大会に参加し続けています。そしてもう一人のレジェンドは、奥様の岡島幸子さんとともにアミザーデサッカー大会を育ててきた、大会主催者の岡島俊樹さん。日本サッカーリーグ(JSL)時代、読売サッカークラブ(現在の東京ヴェルディ1969)でエースとして活躍。日本代表としてもプレーし、日本サッカーの礎を築きました。
10番はもちろんこの人、初代CPサッカー日本代表の大橋選手。そして脇を固めるのは岡島さん夫妻のご長男、テラさん、そして横浜BAY FCのシゲさん。
レジェンドチームと対戦するのは「横浜BAY FC & PALRABOX &富山スペシャルオリンピックス連合チーム」。
試合が始まると、水沼さんが元日本代表の片鱗を見せつけます。手抜き一切なし。連合チームも心置きなくチャレンジに行けます。
岡島さんも堅い守備を見せ、試合はレジェンドチームのペースに。
大橋選手がゴールを決めると、立て続けに水沼さんもゴール!
連合チームも度々チャンスを作りますが、活かすことができません。
終了間際には、再び水沼→テラさんのコンビネーションでレジェンドチームが駄目押し。試合はレジェンドチームの快勝に終わりました。
観る人もプレーする人も、最後まで笑顔が途切れることはありませんでした。
魔法が解けるとき
3日間の全プログラムが終了し、表彰式を残すのみ。優勝、準優勝のほか、個人表彰も。全てのチームに参加賞が送られます。
参加賞は、心に残る嬉しいお土産。
そして、大会スタッフとしておやつタイムや昼食の用意をしてくださった「ケータリングの魔法使い」、長尾典子さんにも表彰が送られました。ごちそうさまでした!
毎年コンサートを開き、その収益を大会に寄付しているスタッフや、ずっと大会を支えているスタッフ&ボランティアに支えられて、この大会は20年も継続できています。
水沼さんが最後の総括。「今日は移動にかかる時間の方が長かったかもしれないけれど、たとえ数時間の滞在になろうとも、毎年この大会のために駆けつける準備をしています」と語る水沼さん。彼もまた、「アミザーデの魔法」に魅了された一人です。水沼さんの言葉に、大橋選手やアミザーデファミリーとの絆の強さを感じました。
最後に幸子さんからの閉会の挨拶。「また来年、富山に遊びに来てください」という言葉とともに、夢のような時間は終わりを迎えました。
また、来年。
3日間、お世話になった「アミザーデの魔法使い」幸子さん。「パラキートさんももうアミザーデの仲間です。また来年もぜひ気軽にいらしてくださいね」(ご夫婦での写真を撮ることができずすみません)。
大会長を務めた岩岡さん。「来年はぜひプレイヤーとしてみんなと一緒にボール蹴ってください」のお言葉が嬉しかったです。
初参加のパラキートを快く受け入れてくださったテラさん。そして素敵な時間を共有してくれた浅井さんに感謝。僕にとって、彼もまた魔法使いの一人です。
名残惜しい時間を慈しむように、再会を誓いそれぞれの家路に就きます。また来年も必ずここに集まろうと心に決めて。
一同「ありがとうございました !!」
しかし「アミザーデの魔法」は厄介な魔法。次の開催日が決まると、ついつい指折り数え始めてしまうのだとか。帰路につく参加者の皆さんも、次の第20回大会に向けてカウントダウンを始めていることでしょう。
アミザーデを育み続ける街
帰りの夜行バスを待つ間、夕暮れのオレンジが街並みを美しく染める富山市内をゆっくりと巡りました。アミザーデを育んだ街に吹く風は、静かにパラキートを包み、そして解放してくれました。
…もちろんお腹にも、涼風は吹き抜けていきました(すみません)。
「多分また来年の9月にはここに立って、写真を撮っているに違いない」そう思わされた富岩運河環水公園。そして翌年、予感は見事に的中するのでした。
その時の様子は、また近いうちにご紹介することにしましょう。アミザーデの魔法は、この先もしばらくの間は解けてくれそうにありません。————————————————————————————-大会関係者の皆様、ありがとうございました!————————————————————————————-告 知▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「第21回アミザーデサッカー大会」が今年は千葉県で開催されます。2020年9月20日(日)〜22日(火・祝)の3日間!富山から千葉へと会場を移し、アミザーデサッカー大会の魅力を産地直送。年齢、性別、経験、障がいの有無、関係なく参加できるサッカー大会です。ぜひ、ご参加ください!アミザーデホームページhttps://amizade.amebaownd.com/参加お申し込みフォーム&お問い合わせ先https://ws.formzu.net/fgen/S3896629/アミザーデサッカー大会クラウドファンディング(目標達成!)※終了しています。https://readyfor.jp/projects/amizade▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲————————————————————————————-
(了)
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