- サッカーの現場から
ソーシャルフットボールの歴史、スカンビオカップ、開幕
大阪の秋の風物詩、ガンバ大阪スカンビオカップ。今年もその時期がやってきました。2007年に「精神障がい者のフットサル大会」として第一回大会が開催されたスカンビオカップは、11年もの間、規模を拡大させながら行われてきました。北は北海道、南は九州まで。様々な地域・活動形式のチームが集い、交流を深めてきました。いわば「ソーシャルフットボールの歴史」そのものと言ってもよい大会です。
大会を創設した大阪・新阿武山病院の岡村武彦院長(中央)(前日本ソーシャルフットボール協会理事長)。ご自身もフットサルを愛好し、熱烈なガンバ大阪サポーター。「設立当初はエンジョイ志向であまりガツガツしていなかったけれど、年を追うごとに参加チームがレベルアップしてきた」とお話ししてくださいました。
第11回大会となる今年は、熊本から千葉までの16チームが出揃い、一発勝負の熾烈なトーナメント戦で争われます。大会の常連であるFCウエノ(京都府)、YARIMASSE大阪(大阪府)、ゴッデス高槻(大阪府)などが今年も顔を揃えるほか、11月に地域選抜大会出場を控えるエストレージャ愛知(愛知県)、また九州から参戦の(熊本県)などの遠征組も参加。もちろん王者Espacio(千葉県)も参戦するなど、ソーシャルフットボールの全国規模の大会としては、西日本最大級の大会です。出場チーム数は減ったものの、大会は凝縮され、白熱の試合があちこちで見られそうです。
————————————2018第11回ガンバ大阪スカンビオカップ出場チーム
滋賀ラクーンドッグス(滋賀県)たぬきFC(滋賀県)※滋賀ラクーンドックスと兄弟チームFCウエノ(京都府)おこしやす京都(京都府)Espacio(千葉県)エストレージャ愛知(愛知県)アミスタッド茨木(大阪府)INTERVALO大阪(大阪府)ゴッデス高槻(大阪府)アミザージ078(兵庫県)YARIMASSE大阪(大阪府)阪南病院デイケア(大阪府)FC明日葉(大阪府)トーラドーラ(熊本県)花園ジーバーズ(大阪府)ESPERANZA(大阪府)————————————
他を圧倒したEspacio、笑顔の愛媛オレンジスピリッツ
さて、そんなスカンビオカップですが、昨年パラキートは第10回大会にお邪魔させていただきました。その時の様子を振り返ってみましょう。昨年の第10回大会では競技志向チームからエンジョイクラスまで幅広く、計20チームが出場しました。
東北地方、東海地方、関東地方からも複数のチームが参戦し、終わったばかりの全国大会の雰囲気をそのまま持ってきたような雰囲気で、パラキートも心躍りました。
全国大会の勢いをそのままに大阪へ凱旋したEspacio
この大会、会場にいた人たちの注目を集めたのは、やはり何と言っても全国大会優勝のEspacio(千葉県)。全国大会の勢いそのままに、大阪に乗り込んできました。
慣れないピッチとレギュレーションにその得点力は鳴りを潜めましたが、初戦のアミスタッド茨木、続くFCウエノ戦を制し、準決勝で難敵ゴッデス高槻を粉砕。
決勝戦はEspacio(千葉県)vsグランゼーレ東北(青森県/岩手県/山形県/宮城県)の組み合わせとなり、全国大会出場を辞退したグランゼーレ東北は、その鬱憤を晴らすが如く奮闘。しかし相手はEspacio、試合はやがて一方的な展開に。
「どうすればこのチームを倒せるんだ…」決勝戦のピッチには、その場にいたすべての選手や関係者の熱い視線が注がれました。
そんなことはものともしないEspacioは、終盤さすがに疲れを見せつつも、終わってみれば圧巻の優勝。関東勢ここにあり、を存分に見せつけた結果になりました。
最終的にEspacioに敗れはしたものの、グランゼーレ東北の健闘には会場からも大きな拍手。全国にはまだまだ強いチームがたくさんいるのだと再認識させてくれました。
愛媛オレンジスピリッツはその結束力で台風の目に
同じく全国大会出場勢で気を吐いたのは、四国から参戦の愛媛オレンジスピリッツ。
全国大会では開催地ながら予選リーグを敗退し、サポーターに良い結果を伝えることができませんでしたが、この大会では抜群のチームワークを発揮。
優勝候補の一角YARIMASSE大阪相手にPK戦に持ち込むと、力強いシュートでPK戦を制し見事に準々決勝進出。「うちらカッコイイよ!」女性選手の跳ねるような声が会場に響きました。
勢いの止まらない愛媛オレンジスピリッツは、続く優勝候補のグランゼーレ東北戦でも失点しては取り返し、PK戦へもつれ込む好勝負を演じました。
YARIMASSE大阪とのPK戦でファインセーブを連発したGKでしたが、ついにここで力尽きます。腕の間をすり抜け、ゴールに吸い込まれるボール。
勝利を確信したのはグランゼーレ東北の方でした。
敗退が決まり、膝をつく愛媛オレンジスピリッツのメンバーたち。でもその表情には充実感も感じられました。
敗れはしましたが、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた愛媛オレンジスピリッツ。輝かしいオレンジのユニフォームが、夕暮れの空に映える印象的な一戦でした。
心機一転で大会に臨んだ、二つのあいち
全国大会出場のエストレージャ愛知は、チームを2つに分け、競技志向の兄貴分「エストレージャ」、エンジョイ志向の弟分「コレーガ」として出場。
コレーガは幸先よく初戦を突破し、続くグランゼーレ東北戦ではPK戦までもつれ込んだものの、その壁を越えることはできませんでした。
一方のエストレージャは、第一試合FC明日葉戦で不覚をとり、まさかの初戦敗退。
しかし、これで終わらないのが強豪愛知勢。初戦敗退チーム10チームで対戦する「敗者トーナメント」では、滋賀ラクーンドックス、おこしやす京都、アミスタッド茨木、HARF TIMEという癖のある強敵を倒してトーナメントを制覇しました。
チームを2つに分けた背景には様々な葛藤があったと思いますが、試合を存分に楽しんでいる様子が、ファインダーを通して伝わってきました。
苦杯をなめた関西勢、リベンジなるか
一方で振るわなかったのは関西勢。全国大会でも苦杯をなめたYARIMASSE大阪は、リベンジを果たすべく大会に臨みましたが、第二戦で愛媛オレンジスピリッツにPK戦で敗れ、力及ばず。
全国大会でエストレージャ愛知と激しい順位争いを演じた、おこしやす京都(京都府)も、シードで出場するも初戦で敗退し、その実力を見せるのは翌年の関西大会(優勝)まで待たなくてはなりませんでした。
今回は大阪の8チームに、滋賀ラクーンドックス(滋賀県)、たぬきFC(滋賀県)、おこしやす京都(京都府)、アミザージ078(兵庫県)、FCウエノ(京都府)が加わり、近畿勢13チームvs他県3チームという構図。ソーシャルフットボールの覇権を関西へ。関西勢の鼻息も荒くなります。
「Scambio〜交流」という名の大会
大会が冠する「Scambio」という言葉は、イタリア語で「交流」を指します。その言葉通り、たくさんの気持ちが交差し、通い合う大会でもありました。それはお互いを称え合う気持ちだったり。
チームを励ます声援だったり。
意地の張り合いだったり。
時には駆け引きだったり。
お互いを信じる気持ちだったり。
仲間同士の祝福だったり。
監督の叱咤激励だったり。
そんないろんな「Scambio=交流」が詰まった大会、それがスカンビオカップ。会場に足を運べば、たくさんの「Scambio」があなたを出迎えてくれることでしょう。
注目の第11回ガンバ大阪スカンビオカップは、大阪大学の吹田キャンパスグラウンドで10月13日いよいよ開幕!ソーシャルフットボールの縮図でもあるこの大会を見逃す手はありません。是非、会場へ足を運んでください!
—————————————第11回ガンバ大阪スカンビオカップ10月13日(土)大阪大学吹田キャンパスグラウンド「すいれん」
LIVE配信も決定!!(タイムスケジュールは変更になる可能性があります)URLからアクセスして、白熱の試合を見守りましょう!
(了)—————————————————————————————————-
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