FC PORT航海記〜日本一を目指した180日間⑦嵐の先にあるものは

  • サッカーの現場から

胸騒ぎの中の最終戦

FC PORTは最終戦を迎えました。ここまでで勝ち点7、同勝ち点で並ぶリベルダージ北海道にも、得失点で7点の差。しかし、佐藤監督は浮かない表情です。YARIMASSE大阪相手に5点を奪ったリベルダージ北海道の「得点力」が気になっていたのです。

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FC PORTが最終戦で勝ち点3を上積みしてリーグ戦を終えても、リベルダージ北海道が最終戦を勝利すれば、得失点差で逆転されてしまう可能性はまだ残っていました。

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「念には念を入れよう。自分たちの力で、決勝進出を手繰り寄せようぜ」決勝進出に王手をかけ少し浮ついた雰囲気を、佐藤監督は引き締めます。目の前にいる相手を大量得点で倒すこと、それを選手たちに繰り返し伝えます。

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FC PORTは今までに経験したことのない状況に立たされていました。スタッフはそんな彼らには何も声をかけず、ただひたすら信じてピッチへと送り出したのでした。

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さあ、予選リーグ最終戦が始まります!

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グループA 第九試合 FC PORT(神奈川県)vs CitRungs Tossa(高知県

前半

キックオフ直後、CitRungs Tossaのロングシュートで試合は始まりました。その後は序盤からFC PORTペースで試合が進みます。

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パスを左右に回し続け相手ディフェンダーを翻弄し、時折シュートを織り交ぜるなど、終始試合の主導権を握り続けました。CitRungs Tossaはボールを奪えず、逆にペナルティエリア内に選手3人が釘付けにされます。

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わずかな攻撃のチャンスも、ムーチさんは相手のアタッカーからむしり取るようにボールを奪うと、自ら果敢に仕掛けます。

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そして前半5分、待望の先制点が生まれます。トビくんが放ったミドルシュートは、翻弄される守備陣の隙間を縫ってゴールに吸い込まれました。

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のっしのっしと歩きながら、感情を爆発させるトビ。この時ばかりは、こみ上げるものを抑えきれませんでした。

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なおも攻め続けるFC PORT。シュートを何本も蹴りこみますが、CitRungs Tossaの守備陣がそれを許しません。高い集中力で跳ね返し続けます。

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しかし、その守備も長くは持ちませんでした。前半10分、小刻みに繋いだパスはハッシーを経由して、ゴール前のモッチーへ。モッチーがそれを押し込み2-0。

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普段はおとなしく感情を表に出さないモッチーも、ハッシーへ駆け寄ります。

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前半終了間際、相手のパスをカットしたハッシーがそのまま持ち込み、絶妙なコントロールシュートで3点目をゲット。

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順調に終えた前半でしたが、監督は満足しません。「前半はすごくよかったけど、まだまだ行ける、もっと点を取りに行こうぜ!」喉は枯れ、絞り出すように声を発する監督。その姿が選手たちを一層奮起させました。

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ディフェンスリーダーのムーチさんも積極的に指示を飛ばします。「自分は大会の時だけの助っ人でいい」と言っていた半年前の姿はもうありません。

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エンドが変わって後半に入ります。「よし、決めていこう!」

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後半

後半もFC PORTの勢いは止まりません。開始早々、いきなりの追加点。

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決めたのは常にゴール前で張っていたジュンコさん!ベンチも大喜びです!

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関東大会で優勝を逃したのはEspacio戦で自分がオウンゴールしたせいだと、負い目を抱えながら戦ってきたジュンコさん。チーム創設から10年間、誰よりもチームを愛し、ネイルをチームカラーのブルーに染めて今大会に臨んだ彼女の、競技人生での初ゴールでした。

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前日から連戦が続いたトビくんを休ませるなど、効率よく選手交代を繰り返しながら、その後もFC PORTの攻勢は続きます。

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ピンチのシーンもこの気迫!!

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そして、攻撃陣も躍動します。ゴールに次ぐゴール!

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しかし、CitRungs Tossaもやられっぱなしではありません。なんとか一矢報いようと、必死の守備、そして反撃の気配を見せます。ただFC PORTの集中力は、最後まで途切れませんでした。

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そして、試合終了。9-0の圧勝でした。

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圧倒的に劣勢ながらも、最後まで全力で挑んできたCitRungs Tossa。そんな彼らに両手でしっかりと握手をし、リスペクトを欠かさなかったFC PORTの選手たちの姿は、頼もしく誇らしく思えました。

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そして、喜び炸裂!最高の形で、予選リーグを締めくくりました。2位リベルダージ北海道に総得失点16点差という大差をつけて、この後行われる最終戦の結果を待ちます。

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試合が終わって控えエリアに戻ると、眼下ではすでにリベルダージ北海道と鳥取県選抜の試合が始まろうとしていました。「チーム力から見て、リベルダージは鳥取に勝利するだろう。ただ、16点以上なんて獲れるわけがない。大丈夫、逃げ切れる…」佐藤監督は頭の中でそう言い聞かせていました。

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グループA 第十試合 リベルダージ北海道(北海道)vs 鳥取県選抜(鳥取県

リベルダージ北海道が決勝へ勝ち進む条件は「16点差での勝利」。30分間で16得点&無失点は、まさにミッションインポッシブル。

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しかし、リベルダージ北海道はその不可能に果敢に挑みました。前半開始1分、先制弾が炸裂。そして5分に追加点。6分までに2点を追加し、10分間で5得点。このペースで行けば、フルタイムで15点が獲れる計算になります。

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ゴール後も黙々とボールを抱えてセンターサークルへ走る、リベルダージ北海道の選手たち。

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戦況を見守っていたFC PORTの選手たちの目にも嫌な色が浮かび始めます。前半終了間際、6点目。「頼む、決めないでくれ、決めないでくれ…」監督の不安が現実になりつつありました。

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後半に入ってもペースが落ちないリベルダージ北海道、後半1分に7点目を決めると、後半3分に8、9点目、後半4分にはオウンゴールで10点目。

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リベルダージ北海道は打ち損じのシュートも得点に結びつけるなど、強運をも手繰り寄せます。もはや会場のすべてがリベルダージ北海道に味方しているようでした。その戦況を冷静に、そして祈るように見つめる井上監督。

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監督も選手も、頭の中では残り6点がカウントダウンを始めています。「…やばい」誰もが思い始めたその時、リベルダージ北海道に14点目が入りました。

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残り時間は4分。3点を獲得するには十分です。しかし、鳥取県選抜も必死の守備。試合を見守るFC PORTのメンバーには、鳥取県選抜のGKが救いの神のように映りました。

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時間が過ぎていくのがどれほど長く感じられたでしょうか。そして…笛の音が鳴り響く。スコアは…14-0!!!この瞬間、FC PORTの決勝進出が決定!あと3点を取られていたら逆転という、まさに綱渡りの状況だったのです。リベルダージ北海道の決勝への執念は凄まじいものがありました。ともかく、FC PORTはクラブ史上初の、全国大会決勝へと進出を果たしたのでした。

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激闘のグループB、決勝に駒を進めたのは…!

グループAがスリリングな首位争いを繰り広げている中、同時に試合が進んでいたグループもまた、決勝への1枠をかけた戦いはさらに苛烈なものになっていました。

グループB 第六試合 エストレージャあいち(愛知県)vs 愛媛オレンジスピリッツ(愛媛県

Espacio、おこしやす京都と二戦連続で大敗し、開催県として意地を見せたい愛媛オレンジスピリッツ。対峙するのは首位Espacioを勝ち点3差で追いかけるエストレージャあいち。愛媛オレンジスピリッツは大会初得点をあげましたが、結果は5-1でエストレージャあいちが勝利し、決勝進出へ望みをつなぎました。

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グループB 第七試合 Espacio(千葉県)vs おこしやす京都(京都府

初日2連勝し、Espacioと同率首位のおこしやす京都。直接対決を迎え、ここでEspacioを倒せれば決勝進出が大きく近づく大一番です。一時はEspacioを追い詰めるような試合展開を見せたおこしやす京都でしたが、得点力に勝るEspacioが辛くも振り切り、5-2で勝利。Espacioが独走態勢に入りました。

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グループB 第八試合 長崎ワイルドアミーゴズ(長崎県)vs 愛媛オレンジスピリッツ(愛媛県共に2敗同士の対戦となった第八試合は、長崎ワイルドアミーゴズが意地を見せ、開催県である愛媛オレンジスピリッツの初勝利の夢を打ち砕きます。3-2、あと2点が遠かった愛媛オレンジスピリッツ。地元の声援を受け、前を向いてピッチをあとにしました。

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グループB 第九試合 エストレージャあいち(愛知県)vs おこしやす京都(京都府

自力突破の望みが絶たれた両チームでしたが、接戦の末に1-0で勝利をもぎ取ったのはエストレージャあいちでした。おこしやす京都はここで首位争いから脱落。エストレージャあいちは最終戦のEspacioと長崎ワイルドアミーゴズの試合結果に一縷の望みを託します。

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グループB 第十試合 長崎ワイルドアミーゴズ(長崎県)vs Espacio(千葉県)

Espacioは序盤から猛攻を仕掛け、順調に点を重ねていきます。長崎ワイルドアミーゴズは防戦一方。 そしてそのままタイムアップの笛を聞いたEspacioは、大会前の下馬評通り2大会連続の決勝進出を決めました。

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Bグループ5チームの中で勝ち残ったのは関東代表のEspacio。初の全国大会の頂点の座を賭けて決勝へと臨みます。あと一勝すれば、優勝。その視線の先には、決勝進出に沸き立つ紺碧のユニフォーム、FC PORTの姿がありました。

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予選A,B両リーグの試合は全て終了。大会は決勝を残すのみです。

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奇しくも前回大会と同様、関東勢同士の対戦です。前回大会ではEspacioとダルクが対戦し、ダルクが初の戴冠。Espacioは悔し涙を飲みました。今大会は全国大会初出場のFC PORTと、悲願の全国制覇を狙うEspacioが激突します。果たしてどんな結末を迎えるのか。会場にいる全ての人が、その勝負の行方を固唾を呑んで見守っていました。

   

⑧へ続く

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「パラキートのパラスポーツ日記」では、一人の障害者サッカーファン「パラキート」が自分の脚でおもむき、自分の目で観て、自分の耳で捉え、自分の指で撮り、自分の頭で考えたママを発信していきます。

記事を通して、競技を取り巻く人・環境・社会問題に触れ、この魅力的な世界に関心を寄せ、寄り添ってくださる方が増えることを願っています。

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『"Pick"=掴み取る、選ぶ」と「"Phat"=格好いい、イカした』を組み合わせた造語を屋号に掲げる「PickPhat」。クライアントの意思を尊重し、選び抜いてイカしたサイトをクライアントと共に作り上げます。代表の加藤高明氏は電動車椅子サッカーチーム「Yokohama BayDream」の選手としても活躍中。

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