障がいと共に生きる社会〜ウィルチェアラグビー&まろえもんの公開授業

  • サッカーの現場から

障がいと共に生きる社会とは

昨年12月の暮れ、当事者として講演活動やイベント企画などを積極的に行っている矢嶋氏(以下まろえもん先生)にお声がけをいただき、川崎市内の某小学校で行われた「総合的な学習の時間」の公開授業にお邪魔してきました。

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世間の関心の高まりを受けて、最近は小学校の授業で障がい者を招いての授業を行うことが増えてきました。今回の体験授業は、担当教員とまろえもん先生が中心となって授業の内容やメンバーを検討し、実現したものです。今回まろえもん先生が受け持つのは、4年生の「総合的な学習の時間」。当事者であるまろえもん先生が、ゲストティーチャーとして、自らの日常体験を通して感じたことや知ってほしいことを、スライドを交えてお話します。

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また、今回は豪華なゲストティーチャーたちが勢揃い。9月のリオ・パラリンピックで銅メダルを獲得し、日本でも大きく話題になった、ウィルチェアラグビー日本代表の山口貴久選手(横濱義塾)と羽賀理之選手(AXE)、横浜で活動するウィルチェアラグビーチーム「横濱義塾」の田邊吉基選手と生方亮馬選手、千葉に拠点を構える「RIZE CHIBA」の各務珠実選手、高知県で活動する「フリーダム」の渡邊翔太選手、AXE所属の峯島選手が、ゲストとして参加しました。

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左から峯島選手、生方選手、各務選手、田邊選手。

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やや遅れて登場の、渡邊選手。

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日本代表ジャージに身を包んだ山口選手(中央)。

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山口選手とともにリオで活躍した羽賀選手(左)。そして我らがまろえもん先生(右)

ウィルチェアラグビーの体験授業は、実は幾つかの小学校でも行われていますが、チームを超えてこれだけの選手が集まる体験授業はあまりないかもしれません。しかも、翌日にウィルチェアラグビー日本選手権を控える大事なタイミングにも関わらず、選手たちは時間を割いて集まってくれました。

まろえもん先生&山口先生の授業スタート! 

ゲストティーチャー7人の自己紹介が終わった後は、いよいよまろえもん先生の授業がスタート!今回のお話は「車椅子ユーザーのせいかつについて」。障がい者水泳の選手だったまろえもん先生。現役時代はロンドン・パラリンピック出場を有望視されていた選手でもあります。

f:id:okina_monkparakeet:20170421151348j:plainここで先生は、なにやら長い指示棒のようなものを取り出しました。視覚障害のある選手が壁でターンしたりタッチする合図のために使う「タッピング棒」です。タッピング棒を指示棒代わりに、お話は進んでいきます。

f:id:okina_monkparakeet:20170421223035j:plainまろえもん先生は、車椅子ユーザーの中でもかなりアクティブ。電車に乗るときも駅員の補助を借りることはほとんどありません。まろえもん先生は海へ行ったり、スキーに行ったり、ライブを聴きに行ったり。雨の日も風の日も出かけます。まろえもん先生の行動力に、児童からは驚きの声があがりました。

車椅子ユーザーも健常者と同じように外出を楽しむ、そのためにいろいろな工夫があるし、環境整備も必要、ということを教えてくれました。水上移動ができる車椅子には、パラキートもびっくりでしたね。

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車椅子ユーザーは行動範囲が制限されているイメージがありますが、健常者と変わらないということ学んだ児童たち。

f:id:okina_monkparakeet:20170421223146j:plainさて、まろえもん先生の授業はここまで。次は選手たちの番です。まずは、この日自家用車で訪れていた選手たちが、車椅子のまま自動車に乗り込む様子を児童の前で披露。生方選手(横濱義塾)は、車椅子から自動車の運転席に乗り移る様子をでモンストレーション。渡辺選手(Freedum)は電動式の車椅子収納ボックスを使った乗降を行いました。

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生方選手は車椅子を横付けし、直接運転席へ乗り込みます。

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渡邊選手は電動巻き上げ式のキャリーを積んだ自動車でデモンストレーション。

児童たちは初めて見る車椅子ユーザーの乗り降りに興奮気味。「車椅子ユーザーも車に乗れるんだね!」と話していました。健常者も車椅子ユーザーも、実はあまり変わりないんだよ、ということが伝わったかな?休憩を挟んで、次は山口選手(横濱義塾)のお話を伺います。山口選手は事故による頸髄損傷で、車椅子生活に入りました。リハビリを重ねていくうちに、車椅子でウィリーしたりもできるようになるなど、その活動範囲はどんどん広がっていったそう。今は健常者と同じく社会人として仕事をしながら、ウィルチェアラグビーの練習に汗を流しています。山口選手はこの年ご結婚されたとのことで、子供達から「おめでとうございます!」と祝福をしてもらって、照れ臭そうにしていました。 

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大興奮!ウィルチェアラグビーミニゲーム観戦!

そしていよいよ、子供達のお待ちかね!ウィルチェアラグビー体験授業です。ウィルチェアラグビーの体験会では、体験者が乗ったラグビー車に選手が正面から体当たりをする「タックル体験」が主流。しかし今回は、体験よりも実際に試合を見てもらおう、ということになりました。

f:id:okina_monkparakeet:20170421220747j:plainまずは峯島選手と羽賀選手がデモンストレーション。正面きってのタックルをお見舞いすると、児童たちはその衝撃音にびっくり!そして攻撃用と防御用のラグ車の違いを、山口選手が丁寧に解説します。バン!という激しいクラッシュ音とともに、両者が飛び上がります!

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右が攻撃用、左が防御用。攻撃用はがっしりとしたボディなのに対し、防御用は突き出たバンパーが特徴です。

さあ、選手たちに実際に動き回ってもらいましょう!すでに選手たちは準備万端。選手の素早い動きに早くも児童は目を奪われています。手を伸ばせば触れるような近さ。

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選手がこんな近くまで!大興奮の子供達!

白チームと黒チームに分かれて3on3のミニゲームがスタート!白チームは峯島選手、田邊選手、渡邊選手。黒チームは生方選手、羽賀選手、各務選手。縦横無尽に選手たちが走り回ります。

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楽しいミニゲームとはいえ、一つ一つのプレイは真剣!羽賀選手のタックルを食らって吹っ飛ぶ峯島選手。その迫力に子供達の応援もヒートアップしていきます!

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立ち上がって声援を送る子供達。「くーろ!くーろ!」「がんばれー!しろーっ!」

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白チームが優勢に!勝ち負けこだわらずみんな楽しんでいます。選手たちもこの笑顔。

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もっと黒を応援してくれー!盛り上げる生方選手!

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ゴールを決める各務選手。将来の日本代表入りも期待される女性プレイヤーです。

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試合は白がわずかにリードで勝利!体育館は歓声に包まれました。選手たちはみな一様に満足そうな笑顔。初めて生で見るウィルチェアラグビーの迫力とかっこよさに、子供達も興奮が収まりません。

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最後に質問タイム。障害者スポーツのこと、ウィルチェアラグビーのこと、普段の生活のこと。たくさんの質問が出てきました。「お手洗いに行くときはどうするんですか?」という、切実な質問も飛び出しました。

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「車椅子生活の中で、必要なものって何ですか?」という質問に「勇気と気合」と答える生方選手。車椅子での外出が億劫で、家に閉じこもる生活の方も多いと聞きます。確かに「勇気と気合」は一番重要な要素かもしれませんね。

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「車椅子を使ったエクストリームスポーツもあるくらい、車椅子でもいろんなことにチャレンジしているんだということを知ってもらいたい」と語る生方選手。車椅子生活でも、健常者と同じように生活したいんだ、という気持ちをみなさん語っていました。

授業が終わり、給食の時間。ゲストティーチャーはそれぞれのクラスに分かれて、子供達と食事をともにします。握力がなかったり手がうまくうごかせない選手もいて、彼らが食事の時に何が不自由なのかを目の当たりにしながら、子供達は学んでいくのです。

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食事中はきわどい質問も飛び出した模様(笑)。

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子供達と一緒に過ごした給食の時間は、選手たちにとっても貴重な時間だったことでしょう。そして楽しかった体験授業もあっという間に終了。

控え室では、この日エスコートしてくれた実行委員の子供達に、山口選手がお礼のサプライズ。なんとリオ・パラリンピックで獲得した銅メダルを、子供達に触らせてくれたのです。実物の重さや、振ると鳴る音を体感して、子供達も大感激していました。

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あっという間の短い時間でしたが、しばし同じ時間を共有した選手と子供達。それぞれが感じ取ったものや学んだものも多かったと思います。

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これをきっかけに、福祉やスポーツ分野に関心をもつ子もいるかもしれません。子供達がその後の将来にどんな風に生かしていくのか、とても楽しみですね。選手のみなさん、まろえもん先生、教職員の皆さん、ありがとうございました!

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その2日後。千葉ポートアリーナで開催された日本選手権で、対戦相手としてぶつかり合う6人の選手の姿がありました。そこには体験授業で見せたおだやかな表情はなく、一つのボールを巡って闘志をぶつけ合う、まさにアスリートの表情の表情がありました。

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2017年5月25日〜28日まで、千葉ポートアリーナにて「2017ジャパンパラウィルチェアラグビー大会」が開催されます。山口選手、羽賀選手をはじめ、リオ・パラリンピックで躍進した日本代表の勇姿が見られます。ぜひ会場へ足をお運びください!

www.jsad.or.jp

(了) 

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「パラキートのパラスポーツ日記」では、一人の障害者サッカーファン「パラキート」が自分の脚でおもむき、自分の目で観て、自分の耳で捉え、自分の指で撮り、自分の頭で考えたママを発信していきます。

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『"Pick"=掴み取る、選ぶ」と「"Phat"=格好いい、イカした』を組み合わせた造語を屋号に掲げる「PickPhat」。クライアントの意思を尊重し、選び抜いてイカしたサイトをクライアントと共に作り上げます。代表の加藤高明氏は電動車椅子サッカーチーム「Yokohama BayDream」の選手としても活躍中。

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