雌雄決す〜第20回南関東テコンドー選手権大会観戦記③

  • サッカーの現場から

 雌雄を決する第三試合

第二試合は、先ほど伊藤選手と対戦した若手選手が試合を制し、いよいよ第三試合へ。

…その対戦の合間、ふと足元を見ると、何やらゲームコントローラーのようなものが。

まさか選手達はこのコントローラーで操作されてたりして?…なんて。

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ジャッジ用の椅子に置かれたコントローラーコードをたどってみると…。

競技用コートの脇にある記録係用テーブルのモニターへつながっていました。

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審判は赤、青に分かれ、技の得点をこのコントローラーで記録していたわけですね。

電子防具を使用しない大会では、このような集計方法を取るそうです。

競技中の選手にも得点がリアルタイムで見えるようになっています。

反則は主審が直接選手に宣言し、パソコンを操作するスタッフが記録するという段取りになっています。

自分が戦況的に有利か不利か、試合中に確認ができるのは安心ですね。

さて第三試合が始まる少し前…。

これから対戦する選手と伊藤選手が挨拶を交わすシーンを写真に収めました。

互いをリスペクトする気持ちが伝わるとても印象的なシーンでした。

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しかし、ヘッドギアとプロテクターに身を包むと両者の表情は一変。緊張が伝わってきます。

青の選手は上肢障害を持ち、パラプムセとのダブルエントリー。

どのような障害を持っているかまでは確認できませんでしたが、リウマチなどでも

上肢障害として登録される場合もあるそう。

今大会では、パラプムセは知的障害だけではなく、身体障害でもエントリー可能ということでした。

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第一ラウンド

試合が始まります。先手を打ったのは伊藤選手。

間合いを取って慎重に試合に入った第一試合よりも早めに勝負を決めにきた印象です。

相手選手が両腕を使えることも念頭にあるのかもしれません。

パラテコンドーで許される攻撃は、胴体への蹴りとパンチ。

腕が自由に使えるわけではありませんが、両腕がある相手選手の方が

有利ではあります。技量で勝る伊藤選手は、試合を早く決めにかかっています。

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伊藤選手は左半身の防御を考え、左足を軸とした右足での足技が中心。

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この前の試合で負けているため、この試合は落とせないと考えてか、

相手選手もかなり積極的に攻撃に出ます。両者ぶつかり合いの様相になってきました。

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相手の選手は、左右の足を巧みに繰り出していきます。

ヤンバルチャギと呼ばれる多重蹴りです。両方当たると2点。

飛び後ろ回し蹴り(ティオティフリギ)をカウンターに当てに行く伊藤選手。

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相手選手の攻撃も、巧みにかわしていきます。

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お互いに防御姿勢をとらず、攻撃を当てに行きながら抱きつき(クリンチ)で逃げる、

そんな打ち合いの試合展開になりました。鬼気迫る戦い。

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足技中心の伊藤選手に対し、相手選手は正拳突き(チルギ)で攻めてきます。

それをいなしてはカウンターを当てていく伊藤選手。

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そして、あっという間に第一ラウンドが終了。

一つ一つの技を追うことができないくらいのスピード感あるラウンドでした。

セコンドとのやりとりをかわす伊藤選手も、どことなくやりにくそうです。

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第二ラウンド開始の間、次のラウンドでどう攻めていくかを考えている様子でした。

体格の良い相手選手は、攻撃を食らってもひるむ様子がなく、

むしろ笑顔を見せる余裕もあり、調子の狂う相手であることは間違いなさそう。

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第二ラウンド

第二ラウンドに入っても伊藤選手の手数で攻める戦術に変わりはありませんでした。

開始の合図から声をあげて突進していく伊藤選手。

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しかし相手もひるみません。まるで岩のようにどっしりした構え。

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しかしそれでも、伊藤選手はどんどん蹴りを浴びせていきます。

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相手選手も、たまらず抱きつき(クリンチ)で攻撃を回避する動きが増えてきました。

抱きつきクリンチ)が増えるということは、疲労もたまっているということです。

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付かず離れず、一進一退の攻防が続いていきます。気迫と気迫のぶつかり合い!

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伊藤選手は落ち着いて技を当てていきます。

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相手選手も少し鈍ってきたところで、第二ラウンドが終了。

試合は第三ラウンドまで勝敗が持ち越されました。

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第三ラウンド

この時点で、ポイントでは伊藤選手優勢。後は落ち着いて試合を決めるだけです。

後のなくなった相手選手は、最後の機会とばかりに猛攻を仕掛けようとしますが、

すでに体力も消耗し、動きは明らかに鈍っていました。最後まで体力の落ちなかった

伊藤選手、勝負を決めに行きます。

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攻撃が交錯するシーンが目立ちます。相手もなりふり構わず攻撃してきている状態。

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相手の猛攻を受けながらも、落ち着いて対処する伊藤選手。経験の差が物を言います。

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そして一瞬の隙を逃さず、右足一閃!ティチャギ(後ろ押し蹴り)が決まります!

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続けざまのミリョチャギ(押し蹴り)。

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もはや相手選手は押し込まれるままになっています。

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そして2分経過!

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第三ラウンドも伊藤選手が優勢のまま勝利。

この瞬間、パラ部門での伊藤選手優勝が決まりました。互いに健闘を称え合う両者。

とても気持ちの良いシーンです。

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戦い終わって

第三試合が終わった後、疲れているはずの伊藤選手が私の元に挨拶をしに来て

くださいました。

その顔は体験会の時に見せてくれた柔和な笑顔。先ほど闘志むき出しに戦っていた

とは思えないほど晴れやかな表情でした。

ちょっと遅めの昼食をご一緒しながら、アンプティサッカーやパラテコンドーのこと

など、お話を伺うことができました。パラテコンドーの技や障害の階級について、

世界と日本とのパラテコンドー環境の差など。

食事中、サッカーの元スウェーデン代表、イブラヒモビッチ選手の名前が出てきました

が、イブラヒモビッチ選手はもともと空手を嗜んでおり、プレイ中に空手技を思わせる

アクロバティックなシュートを決めることで有名です。

伊藤選手も、アンプティサッカーの試合の中で、テコンドーシュートを決める機会が

あるかもしれません…ってGKでしたね…。

アンプティサッカーも、パラテコンドーも、目下の課題は競技人口を増やすこと。

特にアンプティサッカーは競技人口が80人あまりと少ないため、認知度向上と普及は

急務であり、リハビリ施設などに積極的に働きかけていったら良いのではないか、

など、意見交換もさせていただきました。

パラテコンドーは2020年東京パラリンピックでは正式種目。出場を目指す伊藤選手は、

まだ競技歴1年あまり。練習環境も徐々に整い、生活も落ち着いてきた今年からは

食事のコントロールなども本格的に始めて行くそうです。

東京での活躍が期待される未来のパラリンピアン、そしてメダリストを目の前にして、

私も4年後の伊藤選手の活躍を思い描いていました。

食事後、ちゃっかり私の所属するフットサルチームへの練習へのお誘いをし、

そして今後の活躍を祈って、試合会場へと戻ったのでした。

表彰式です。優勝は伊藤選手。

国内でのパラテコンドー大会は今回が初めてなので、国内初優勝になります。

そして、伊藤選手にとってはパラテコンドーを始めてから初のタイトル獲得。

「これは通過点ですから」と謙遜していましたが、キャリア初のタイトル獲得シーンに

立ち会えたことはとても光栄なことでした。おめでとうございます!

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胸に輝く金メダル。4年後、東京パラリンピックの舞台でこの姿を見たいですね!

ちょっとカメラ目線いただきました。そして満面の笑み!

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最後に、カメラに向かってポーズを決めていただきました。

お疲れのところを長い時間お時間割いていただき、本当にありがとうございました!!

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パラテコンドー日本代表 伊藤選手、そしてバンブルビー千葉GK 伊藤選手として

パラキートブログはこれからも伊藤選手を全力で応援していきたいと思います。

そして、パラテコンドーとアンプティサッカーの魅力を、これからもどんどん

伝えていきたいですね!

(了)

パラキートのパラスポーツ日記とは

「パラキートのパラスポーツ日記」では、一人の障害者サッカーファン「パラキート」が自分の脚でおもむき、自分の目で観て、自分の耳で捉え、自分の指で撮り、自分の頭で考えたママを発信していきます。

記事を通して、競技を取り巻く人・環境・社会問題に触れ、この魅力的な世界に関心を寄せ、寄り添ってくださる方が増えることを願っています。

プログラム制作・HP管理/「PickPhat(ピックファット)」

『"Pick"=掴み取る、選ぶ」と「"Phat"=格好いい、イカした』を組み合わせた造語を屋号に掲げる「PickPhat」。クライアントの意思を尊重し、選び抜いてイカしたサイトをクライアントと共に作り上げます。代表の加藤高明氏は電動車椅子サッカーチーム「Yokohama BayDream」の選手としても活躍中。

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