電くるを徹底解剖する??2017あいち電動車椅子サッカーアカデミー

  • 電動車椅子サッカー

学びの2日間!あいち電動車椅子サッカーアカデミー

「あいち電動車椅子サッカーアカデミー」というイベントをご存知でしょうか?愛知県電動車椅子サッカー協会が主導で毎年7月に開催される競技普及プログラムの一環が「あいち電動車椅子サッカーアカデミー」。

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もともとは愛知県内の電動車椅子サッカーチーム同士の交流大会だったものが、県内チーム減少に伴い県内外チームとの交流を柱とするイベントとして継続しています。ここで2日間にわたって開催される「あいち電動車椅子サッカーアカデミー」に参加するためパラキートが愛知に降り立ったのは昨年7月のこと。最寄りのJR東海道本線大府駅からバスで15分ほどの所にある、あいち健康の森内の大型レクリエーション施設「あいち健康プラザ」がその会場です。

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大会、講義、交流会…初日から充実のプログラム! 

あいち電動車椅子サッカーアカデミーの仕掛け人はこの方、浅野琢哉氏。2011年の電動車椅子サッカーW杯フランス大会に帯同し、世界を観てきた方です。そして、審判員インスペクターとして後進の育成にも力を入れています。

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アカデミーは大きく6つのプログラムに分かれており、そのどれもがかなり濃い内容です。では、その一つ一つの様子をご紹介していきましょう。

1.電動車いすサッカーラリー2017インターシティAichi県内外5チームが出場し、時速6kmルールでの総当たり戦(計10試合)。2日間に渡り総勝ち点で競われました。——————————————–出場チームは・DKFBCディスカバリー(愛知県)SFCデルティーズ(静岡県・金沢ベストブラザーズ(石川県)・兵庫パープルスネークス(兵庫県・YOKOHAMA BayDream(神奈川県)——————————————–

大会は、勝ち点10で金沢ベストブラザーズと兵庫パープルスネークスが並びましたが、得失点差で上回った金沢ベストブラザーズが優勝。

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実は日本選手権の前哨戦という意味でも興味深い大会でした。第一試合ではDKFBCディスカバリーが兵庫パープルスネークスと対戦。この時点ではすでに日本選手権で顔を合わせることが決まっていたため、この試合はいわばプレマッチ。

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結果は機動力に勝る兵庫パープルスネークスが1-0で勝利を収めましたが、DKFBCディスカバリーもあわや引き分けかという積極的な試合運びで、日本選手権での躍進を期待させる内容でした。

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YOKOHAMA Bay Dreamも日本選手権に向けて手応えと課題の両方を手にしていたようでした。勝負弱さを常々口にする加藤選手もこの日はのびのびとプレイしていました。

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SFCデルティーズは、この大会でのチャレンジがのちの日本選手権優勝という快挙へと繋がっていきます。

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試合の結果は以下の通り。 

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(愛知電動車椅子サッカー協会より引用)

さてこの大会、最大の特徴はスタッフも参加できるということ。普段はバックアップに回るスタッフですが、この大会では選手として出場できます。

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練習ではスタッフもプレイヤーとして参加する金沢ベストブラザーズ。逆にSFCデルティーズのスタッフは四苦八苦の果てにゴール前のボールを処理し損ね、痛恨の失点。会場は大爆笑。叫ぶYOKOHAMA Bay Dream 20#木下絵理選手「いただきます!」

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そんな一体感のある大会だったからでしょうか?大会は終始和やかなムードで進行していきました。ベンチの雰囲気もチームによって異なります。それぞれが課題を確認し、日本選手権に繋げようとしていました。穏やかな中にも、決意がみなぎるDKFBCディスカバリー

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常に笑顔の絶えない兵庫パープルスネークス。

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SFCデルティーズはスタッフも参戦して元気いっぱいです。

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チームの課題を確認しながら、リラックスも忘れないYOKOHAMA Bay Dream。

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「先発出たい人ー?」「はーい(全員)」「…そうよね」マイペースな金沢ベストブラザーズ。

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緊張感漂う普段の大会とはまた違う雰囲気で、大会を楽しめるのがこの「電動車いすサッカーラリー2017インターシティAichi」の魅力なのかもしれません。

2.電動車椅子指導員養成講習(電動車椅子試乗)障害者スポーツ指導員の有資格者を対象に、電動車椅子に実際に乗って操作のポイントを学び、体験会や競技初心者を指導する「電動車椅子指導員」の養成講座です。

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電動車椅子サッカーの競技車両としては名機と名高い「Emu-s (エミュー)」や「TORK(トルク)」といったマシンが並びます。

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そして講師を務めるのは、金沢ベストブラザーズの若き監督兼選手、城下歩氏(以下、城下先生)。

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埼玉県のBLACK HAMERSに招かれての電動車椅子サッカー講座は記憶に新しいところ。石川県電動車椅子サッカー協会とのコラボレーション企画でもあります。この講習、JPFAの登録審判も受講できるのが重要なポイント。試合中にレバーが入りっぱなしになったり、選手の手元からレバーが外れて動けなくなったりと、競技中のアクシデントは意外に多いのです。審判が電動車椅子の仕組みを理解していれば、試合中のトラブルにも対処がしやすくなります。

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まずは電動車椅子の基礎から講義はスタート。まずは乗り込み方から。安全装置を解除する、電源を入れる、ベルトで体を固定する…一つ一つの手順を、チームスタッフから教えてもらう受講生達。

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電動車椅子の操作は実に繊細で、ジョイスティックをわずかに傾けるだけで、車体は勢いよく踊ります。手の形を示して適切な握り方を指導する城下先生。

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時速6kmとはいえ、鋼鉄製の電動車椅子が足に当たれば簡単に骨折してしまいます。先生の注意事項を聞く受講生の目も真剣。

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そして実走。目線をどこに持っていくか、レバーの入れ具合など、身体で感覚を身につけていきます。

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基本操作がわかってきたら、ボールを避ける練習。容赦なくけり込まれるボールを、電動車椅子を巧みに操ってかわす受講生達。数分後には全員が電動車椅子を乗りこなしていました。

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座学パートでは、電動車椅子の扱い方を指導する際の心構えや、受講生達が教える立場になった時に気をつけるべき指導のポイントを解説。

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 1日目の講習を受けた受講生は翌日、今度は指導員の立場に立ち、1日目にレクチャーされたことをそのまま他の受講生に教えます。こうして「電動車椅子指導員」としての第一歩を踏み出しました。

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彼らが地元に戻り、そこで電動車椅子サッカーのチームを指導する。そしてそこからまた指導員が生まれ、新しいチームを作っていく。そんなサイクルが生まれるかもしれません。

f:id:okina_monkparakeet:20180716122747j:plain3.審判講習会東海、近畿近県の審判が集まり、レベル向上のための審判講習会が行われました。講習はサッカーラリーを実習の場として行われ、2on1の判断基準、フラッグの揚げ方などの確認が綿密に行われていました。参加したのは、すでに10年以上のキャリアを積んできた国内トップクラスの審判員たちと、これからの電動車椅子サッカー界を背負って立つ若手審判員。

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序盤の試合はベテラン審判員が主審を務め、後半の試合は若手が主審、ベテランが副審を務めるセットで、経験を底上げしていきます。

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普段の生活の中では、審判同士でのディスカッションの機会は非常に限られてしまうため、こうした機会はとても重要です。

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もう一つ、今回の審判講習会で注目だったのは、金沢ベストブラザーズにスタッフとして在籍していた城下侑樹さんが、主審として笛を吹いたこと。

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電動車椅子サッカーの審判は、資格を取得した県以外の地域では、原則笛を吹くことができません。現状のルールでは審判員が経験を積む機会が限られてしまい、国内の審判はなかなか育たないのです。今回は特例で城下さんが主審を務めることを認めてもらっての参加。そしてこの経験が、2ヶ月後の日本選手権での経験へとつながりました。

そして同時に、幼少期から慣れ親しんできた金沢ベストブラザーズのスタッフとして侑樹さんが公式の場で活動をするのは、この日が最後になりました。審判員としての道を歩むことを決めたからです(B級審判員以降はチームのスタッフとして帯同することができない)。

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2日間の審判講習会は、参加した審判員それぞれに大きな収穫をもたらしたようです。

4.JPFA公認審判員新規資格取得講習会この日、初級審判講習会が開催され、新しい審判が誕生しました。普段は少年サッカーの審判をしているという望月さん。電動車椅子サッカー自体、しっかりと見るのは初めてとのことでした。

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若い審判団のセット。

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ベテラン審判からレクチャーを受ける3人。実際の大会の中で行われる初級審判の講習は、程よい緊張感。

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高齢化も囁かれる審判の育成は、電動車椅子サッカー界にとって早急の課題です。若い審判たちのハツラツとしたジャッジぶりは、とても頼もしく感じました。

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5.交流夕食会選手、スタッフ、審判の皆さんが分け隔てられることなくテーブルに並ぶ夕食会。終わったばかりのW杯の話、戦術の話、ストライクフォース電動車椅子)の話から、審判になったきっかけ話に至るまで…関係者と交流する機会はあまりないので、とても貴重な機会になりました。驚くのは、とにかくみなさんお酒に強いこと。試合で消費したカロリーはビールで補充!と言った感じで、みるみるうちにビール瓶が空になって行きました(写真は割愛w)6.競技普及カンファレンス夕食後は競技の普及についての意見交換会。希望者のみの出席ということでしたが、会場にはほぼすべての参加者が集まり、熱心に耳を傾けていました。

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競技のルールの中でわからないことや、チームが抱える不安などについて意見が出されました。レギュレーションの変更による年間の試合数の減少、選手の確保の難しさが話題として上がっていました。

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カンファレンスのもう一つのテーマは「競技の普及」。内輪ではなく、外に開かれていくべき、というような意見もチラチラと囁かれていました。県内チームの消滅という苦い経験がある愛知県としては、このテーマには特に力を入れている印象がありました。

7.親睦会(おまけ)実はこちらがメインといってもいんじゃないか、などと誰かが冗談を飛ばすほど濃い内容の親睦会。普段はなかなか言えないチームの悩みや、競技に対する想い、日本代表に対する憧れなど、一晩では語り尽くせないほどの電動車椅子サッカー愛にあふれた親睦会が、夜通し続きました。

参加者がどれだけ電動車椅子サッカーを愛してきたのかが手に取るようにわかる一晩でした。

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電動車椅子サッカー漬けの2日間。プログラムを終えて、関係者の電動車椅子サッカーへの情熱や、電動車椅子サッカーという競技が持つ魅力を改めて感じることができました。

あいち電動車椅子サッカーアカデミーも、時速10kmが主流になりつつある今の電動車椅子サッカー界において、その存在意義を改めて問い直す時期に来ています。今年も7月28日(土)、29日(日)にかけて開催が予定されているこのイベント、すでにチーム参加の締め切りは過ぎていますが、個人の見学は随時受け付けているようです(要確認)。ぜひ、議論の輪の中に加わってみてはいかがでしょうか。

世界との差を痛感したW杯を目の当たりにして、この競技が置かれている今の立ち位置に疑問や漠然とした焦りを感じている人も多いはず。あいち電動車椅子サッカーアカデミーは、そうした疑問や不安を払拭する絶好の機会を与えてくれたような気がします。同時に、このような取り組みが全国的に広まっていくことを願いたいものです。

(了)

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「パラキートのパラスポーツ日記」では、一人の障害者サッカーファン「パラキート」が自分の脚でおもむき、自分の目で観て、自分の耳で捉え、自分の指で撮り、自分の頭で考えたママを発信していきます。

記事を通して、競技を取り巻く人・環境・社会問題に触れ、この魅力的な世界に関心を寄せ、寄り添ってくださる方が増えることを願っています。

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『"Pick"=掴み取る、選ぶ」と「"Phat"=格好いい、イカした』を組み合わせた造語を屋号に掲げる「PickPhat」。クライアントの意思を尊重し、選び抜いてイカしたサイトをクライアントと共に作り上げます。代表の加藤高明氏は電動車椅子サッカーチーム「Yokohama BayDream」の選手としても活躍中。

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