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ジャイアントキリング!
POWERFUL 6が2試合ずつ同時に行われている横で、MAX10(時速10kmカテゴリ)の熱戦も同時スタート。時速10kmカテゴリを選択したのは計13チーム。日本選手権常連チームが出揃う中、新興チームのA-pfeile広島PFC、久しぶりの日本選手権となるプログレス奈良の姿もあり「第1回日本パワーチェアフットボール選手権大会」の大会名にふさわしい顔ぶれとなりました。
今回は13チームで変則レギュレーションになるため、抽選でシード権を獲得したFCクラッシャーズ(長野)、Red Eagles兵庫、YOKOHAMA BayDreamの3チームは2回戦からの登場。果たしてこれが吉と出るか、凶と出るか。それでは、興奮マックスののMAX10、第1回戦・全5試合をレビューしていきます!!MAX 10 1回戦第1試合 プログレス奈良(奈良県)vs レインボー・ソルジャー(東京都)
MAX10の開幕戦は、再び王座奪還を誓う優勝候補の一角レインボー・ソルジャーと、新しいチームながら2年連続の日本選手権出場を果たしたプログレス奈良との激突。前半、レインボー・ソルジャーはプログレス奈良が準備の整わないうちに猛攻を仕掛け、日本代表トリオ6#内橋翠選手、10#北沢洋平選手、11#吉沢祐輔選手の3人で合計6点。前半で勝敗をほぼ決めてしまいます。
特に6#内橋選手は前半を通してその勢いを維持し、ハットトリック達成。W杯のゴールゲッターが持ち前の得点力を発揮します。
激しくぶつかっていく11#吉沢選手。勢い余ってイエローカードを提示されます。初戦から手は抜きません!
後半からレインボー・ソルジャーは、スタメンとサブ組を大幅に入れ替え、チームの底上げを図ります。
日本選手権の場で実戦感覚を掴みたいサブ組が奮闘します。
プログレス奈良キャプテン、61#小阪竜彦選手と9#小川健選手のゴール際での攻防。
そして61#小阪選手とキャプテン2#中坪勇祐選手もマッチアップ。
11#吉沢選手はベンチに下がった後、サブ組に細かく指示を出しながら試合を見守っていました。丁寧なコーチングをする冷静な側面と、試合中にイエローカードを受ける熱い側面と。彼の魅力はそんなギャップにあるのかもしれません。
強豪の洗礼を受けたプログレス奈良も黙ってやられてる訳にはいきません。後半を無失点に抑え、また幾度もレインボー・ソルジャーのゴールを脅かし、意地を見せました。
試合は0-6でレインボー・ソルジャーが健在ぶりをアピール。一方、昨年に引き続き上位進出は果たせなかったプログレス奈良ですが、来年に期待したくなる力強いパフォーマンスを見せてくれました。
MAX 10 1回戦第2試合 Nanchester United 鹿児島(鹿児島県)vs バレッツ(長野県)
3月のドリームカップ(時速10km)で、3名での参戦ながら強豪をなぎ倒して優勝、観客の度肝を抜いたNanchester United鹿児島が登場。対するは同郷のFCクラッシャーズと何度も練習試合を重ね、時速10kmの世界へと一歩を踏み出した長野のバレッツ。両者は初めての顔合わせで、序盤は互いの出方の探り合いになるかと思われました。
しかし試合は、序盤からワンザイドゲームとなります。開始1分、キックオフ直後の緩みを見逃さなかったキャプテン11#塩入新也選手がいきなりの先制点。
そしてそのわずか2分後には14#井戸崎竜斗選手が、彼自身、日本選手権では初となる追加点をマーク!仲間が総出で祝福します!
一方、バレッツは焦りからか9分にオウンゴールを献上。ズルズルと相手ペースに飲み込まれてしまいます。Nanchester United 鹿児島の至宝、10#東武範選手の鮮やかなセットプレイが、そんなバレッツサイドを釘付けにしてしまいます。
7月のW杯でも見せたテクニックが光る!
11#塩入選手の2得点など計6得点、こちらも前半でほぼ勝敗が決まってしまう展開に。
後半、バレッツは守備の立て直しを図り、落ち着きを取り戻します。2#山浦吉貴選手は攻撃に出ようとするも守備に追われ、なかなか機会を作ることができず。
それでも機動力に勝るNanchester Uniteted 鹿児島の猛攻を抑え切ることができませんでした。3#木村和彦選手、4#有坂嗣郎選手ともにゴールを守りますが、さらに失点。
後半終了間際、13#野下小百合選手がだめ押しのゴールを決め、勝敗は決します。
出場選手のうち4人が得点を記録したNanchester United 鹿児島は、ドリームカップでは機動力と技術力の高さを、日本選手権では組織力と得点力を、それぞれ見せつける形になりました。
バレッツはスコア的にも厳しい敗戦でしたが、時速10kmカテゴリという冒険に踏み出した彼らの奮闘に、観客席からはいつまでも賞賛の拍手が響いていました。
MAX 10 1回戦第3試合 A-pfeile広島PFC(広島県)vs Yokohama Crackers(神奈川県)
関東の強豪Yokohama Crackersと、廣島マインツから移籍した29#谷本弘蔵選手が中心となって、今年誕生したばかりの新興チーム、A-pfeile広島PFCとの対戦。アンプティ、ブラインドでも挑戦を続けるA-pfeileグループのチームと、私の地元横浜の試合とあって、パラキート的に今大会屈指の注目カードです。
ここ数年優勝から遠ざかっているとはいえ、経験・戦力共に圧倒的なYokohama Crackers、のハズでしたが、初戦に固さが出るのがこのチームのウィークポイント。A-pfeile広島PFCキャプテン、29#谷本弘蔵選手と70#清水直樹選手の守備を崩すことができません。
攻撃面でも序盤は精彩を欠くYokohama Crackers。怖いもの無し、奔放なプレイを展開するA-pfeile広島PFCにペースを乱され、思ったように攻撃できません。A-pfeile広島PFCの攻撃を牽引するのは9#八田典子選手。17#永岡真理選手を抑えつつ、攻撃を仕掛けていきます。
試合開始直後に会場に到着したYokohama Crakers応援団長もスタンバイ完了!この不穏な空気を察知してか、応援のボルテージを上げていきます。
その気勢に押されたのか、試合開始から11分が過ぎた頃、ここまで良い感じで試合を展開してきたA-pfeile広島PFCが痛恨のオウンゴールで失点。YokohamaCrackersはこのゴールで態勢を立て直します。前半終了間際に7#三上勇輝選手がシュートを決め、2-0で前半を折り返すことに成功。互いに祝福し合う選手たち。
劣勢に立たされたA-pfeile広島PFC。闘将、29#谷本選手が前線の19#宮脇太陽選手に猛烈な檄を飛ばします。「そのまま!下がるな!」
それに呼応するように、19#宮脇選手が果敢に競り合います。若い19#宮脇選手は、7#三上選手へも物怖じせず挑んでいきました。
一方、前半のうちにリズムをつかんだYokohama Crackersは、その後も自分たちのペースを崩さず、後半をしのぎます。大量得点こそありませんが、10#竹田敦史選手と7#三上選手の日本代表コンビが手堅く3点を獲得し、初戦突破。
挑戦者の立場のA-pfeile広島PFCは敗れはしたものの、一時はYokohama Crackersに肉迫するような勇気あるプレイを見せました。試合終了後、互いに健闘を称え合う選手たちちは、悔しさの中にも充実感に満ちた表情で、この先の成長を期待させました。
これからの活躍が楽しみなチーム。頑張れA-pfeile広島PFC!
MAX 10 1回戦第4試合 金沢ベストブラザーズ(石川県)vs ERST広島M.S.C(広島県)
奇しくも昨年と同じ組み合わせとなった第4試合。その時はチーム事情により3名での戦いを余儀なくされたERST広島M.S.Cでしたが、今年は頼れる11#岩本裕美選手がきっちり間に合わせました。
一方の金沢ベストブラザーズは、チーム初の決勝進出に並々ならぬ決意でこの日を迎えました。6年前のフランスW杯の盟友との再戦を心待ちにしていた監督10#城下歩選手は、実はある特別な思いを持って大会に臨んでいました。
開始4分、その金沢ベストブラザーズ10#城下歩選手が先制点をマーク。そして16分には、チームキャプテン7#畠幸江選手の角度のないシュートが突き刺さり、2点目。昨年の日本選手権と同じような試合展開になります。
しかし、ERST広島E.S.Cは昨年とは違いました。それは、20#横山真也選手と12#住吉謙信選手の小学生コンビ。
昨年の大阪大会から1年を経て、見違えるほどたくましく成長した2人は、キャプテン10#中野勇輝選手の優しくも的確な指示を受けて、果敢に金沢ベストブラザーズに喰らいついていきます。
10#中野選手も、長年のライバルであり戦友でもある10#城下選手と再三火花を散らします!二人の迫力に満ちた戦いは、その場にいた関係者の目線を釘付けにしていました。
本当に見ていてワクワクさせるマッチアップは、その後何度も続きました。
そして、後半に入り徐々に余裕を失う金沢ベストブラザーズ。セットプレイのピンチを招きます。「シンヤ、行くよ!」10#中野選手の声がかかります。
そしてこのチャンスをモノにし、ゴールをこじ開けたのは20#横山選手でした。
日本選手権で記録した初めてのゴールに「シンヤ〜!(泣)」ERSTベンチは大興奮!そして「オレが(点を)獲ったよ!」高らかに叫ぶ20#横山選手。そんな彼に10#中野選手は「初得点、おめでとう」と優しく声をかけます。
さらに35分、今度は11#岩本選手が試合を振り出しに戻す値千金の同点弾!!土壇場でPK戦へと持ち込みました。昨年とは全く違う展開に、序盤は余裕すら見せていた金沢ベストブラザーズは完全に色を失います。
試合はそのままPK戦へ。金沢ベストブラザーズGKは10#城下選手、ERST広島M.S.CのGKは10#中野選手。両チーム、互いにシュートを成功させ、10#城下選手の番がやってきました。
相対する両雄。そして…シュートを放つ瞬間、10数年間苦楽をともにしてきた10#城下選手の競技車「エミュー」が、ついに動きを止めました。慣性で力なく振り抜かれるバンパー。放たれたシュートは力なく甘いコースを通り、10#中野選手がそれを押し出します。PKに絶対の自信を持つ10#城下選手、痛恨のPK失敗!
そして、最終キッカーが放つボールはそのままゴールポストの間を通過。そして笛が鳴り響きました。ジャイアントキリング!金沢ベストブラザーズは想定外の敗北にしばし呆然。ジャイアントキリングを成し遂げたERST広島M.S.Cの歓喜を、金沢ベンチは無言のまま見つめていました。
「自分のせいです。申し訳ない」力なく、しかしどこか吹っ切れたような声色で、10#城下選手がチームに頭を下げます。もちろんそれを責める人間などいるはずがありません。
優勝の望みが絶たれたと同時に、彼にとって相棒エミューとの最後の試合、競技人生の節目の試合でもあったのです。チームのために走り続けた彼の無念の想いは、チームの誰もが知っているのですから。
MAX 10 1回戦第5試合 Wings(岐阜県)vs 奈良クラブ ビクトリーロード(奈良県)
MAX10・1回戦最後の試合。いよいよ昨年の王者、奈良クラブビクトリーロードが登場です。奈良クラブビクトリーロードは、昨年の優勝の立役者である11#中井皓寛選手を欠く中、この日のために戦術の練り直しを進めてきました。
対するはベテラン8#松浦昌文選手率いる岐阜のWings。昨年の日本選手権二回戦で奈良クラブビクトリーロードと対戦し、0-8と大敗した苦い記憶があります。今回はリベンジマッチ、自然と選手達の表情も一段と険しく見えました。
試合が始まると、昨年まで中井選手とコンビを組み、常に息のあったプレイを見せていた3#山田貴大選手がキレのあるプレイを随所に見せます。
昨年よりも声を出す役割が増えた印象のある3#山田選手。適所適所で鋭い指示を出していきます。11#中井選手不在の穴を埋めるべく、攻守にわたって動き回ります。
Wingsも、昨年の悔しい思いを晴らすべく食らいついていきますが、主導権を奪うことができません。15#安井悠馬選手をブロックするWings1#長瀬義則選手。
再三に渡るセットプレイでゴール前に釘付けにされるシーンも。苦しい時間が続きます。
結局、前半6分のシュートを皮切りに前後半合わせて3点を奪取した奈良クラブビクトリーロードが快勝。守備に追われ、攻め手を欠いたWingsに主導権を明け渡しませんでした。
昨年のリベンジを果たすことができなかったWingsですが、少しずつ差を縮めて行っている印象。次の大会こそは台風の目となるかもしれません。
1回戦5試合を終えて、さらに苛烈な2回戦が始まります。2回戦目からはシード権を獲得した3チームが登場。
—————————————————————————————–第一試合 FCクラッシャーズ(シード) vs レインボー・ソルジャー第二試合 Red Eagles 兵庫(シード) vs ERST広島M.S.C第三試合 Nanchester United 鹿児島 vs Yokohama Crackers第四試合 奈良クラブビクトリーロード vs YOKOHAMA Bay Dream(シード)—————————————————————————————–シード権を獲得したチームがその有利な条件を生かすことができるのか、1回戦からの勢いを維持したチームがそのまま駆け上がるのか。戦いはさらに熱を帯びていきます!
④へ続く————————————————————————————————–画像・文章の無断使用、無断掲載は固く禁じます。