希望と展望〜第14回横浜・F・マリノスカップ観戦記③

  • 電動車椅子サッカー

改めて感じた、時速10kmの落とし穴

時速10kmカテゴリはFCクラッシャーズが4年ぶり2度目の優勝。時速6kmカテゴリはBLACK HAMERSが初優勝という結果で幕を閉じたマリノスカップ。表彰式の様子です。

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f:id:okina_monkparakeet:20170217224651j:plain時速6kmカテゴリで優勝を果たしたBLACK HAMERS。3人で大会を乗り切りました。MVPを獲得した10#石井選手。存在感を存分に見せつけた大会となりました。

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f:id:okina_monkparakeet:20170217224654j:plain時速10kmカテゴリで久しぶりの優勝を手にしたFCクラッシャーズ。MVPを手にしたのは11#飯島選手。国内屈指、日本代表への待望論もささやかれる逸材の技術を目の当たりにしました。

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f:id:okina_monkparakeet:20170217224647j:plain準優勝に笑顔の無かった横浜クラッカーズ。しかし、困難にぶつかった時こそ飛躍のチャンス。次は3月のドリームカップに向かってさらにチームの連携を高めてくるはず。期待しています!

最終順位

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国際基準が採用されて初めての公式戦ということもあり、戸惑う選手やチームも多かった印象の今大会。 

・早いボールのイレギュラーな動き

・早いパスに追いつけずにボールロスト

・マシンの制動によるミス

試合を見て感じるのはこれらの要因。練習で日常的に時速10kmを経験しているとはいえ、大会という舞台での緊張感や相手選手のディフェンスの動きなど、不確定な要素も加われば当然ゲーム運びも想定通りにはいきません。ただ、これらの要素は慣れてくれば解決できるもの。大会で経験を積み、徐々に精度を高めていけば大きな問題ではありません。

ということで、時速6kmと時速10kmの大きな違いや、それにともなう戦術の変更に少し触れてみたいと思います。ちなみにこれは私感であり、選手によっては違う意見になると思いますが、それで議論が盛り上がると競技力アップにつながるかもしれませんね。

1.競り合いのシーンの変化

電動車椅子サッカーでは、2選手がボールを挟んで競り合うシーンが多く見られます。互いにボールを挟んで移動すると、ボールの動きが止まり膠着状態になるため、競り合いの手を緩めるタイミングがポイントになります。

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時速6kmだと膠着状態から抜け出しにくく、そのままラインを割ることも(過去大会からイメージ)

時速6kmでの試合では、そのままライン際までズルズルと移動し、最終的にラインを破る場面が頻繁に起きます。スピードが遅いためボールを外そうとしてもなかなか外れないためで、ラインを破った後は副審の判断に委ねられることになります。なので、攻め手側はラインを割る直前に車体を自陣側に傾け「相手が出したよ!」とアピールすることもあります。もちろんこれも正当な駆け引きです。

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対して時速10kmになると、速いスピードで挟まれたボールはイレギュラーな動きをし、もみ合う選手の車体間をすり抜けるケースが増えます。これによりこう着状態が少なくなり、試合にメリハリが生まれます。

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↑前後に激しく動くことで、膠着状態の時間が短くなる様子がわかります。

f:id:okina_monkparakeet:20170216111103j:plain挟み込んだボールも、車体の移動速度が速いため振りほどきやすい。

2.コーナーキックからの展開の変化

電動車椅子サッカーでも、コーナーキック(以下CK)からの攻撃は得点チャンスです。ただし時速6kmの試合になると、これも膠着状態を生み出す要因になります。

CKの際、守備側は車体の側面をボールの侵入に対して傾け、ゴールラインもしくはサイドラインに弾き出します。ラインを破れば再びセットプレーから始まるため、守備側は再び同じことをして危機を脱しようとします。つまり、セットプレー→弾き出す→セットプレー→弾き出す…という状態が延々続くことになります。長い時だと5分以上もその状態が続くため、得点が先行しているチームはわざとその状態を作り出し、タイムアップまで逃げ切る作戦を取ることもできます。

f:id:okina_monkparakeet:20170218091257j:plainリードしている側はコーナーキックを利用して時間稼ぎをすることもできる(イメージ)

もちろんこれも立派な戦術ですが、観ている側にはあまり面白くない展開です。対して時速10kmの場合。回転のスピードも上がるためシュートは勢いを増し、ゴールが決まるチャンスが格段に増えます。またCKを繰り返させるためにゴールラインを割らせることも難しくなるため、CKの危険度も増加。つまり、そもそもCKを相手に取らせないように試合運びをする必要が出てくるわけです。3.ボールに追いつくことによる戦術の広がり

時速6kmではフリーボールに追いつけることはほとんどありません。なので、常にボールの軌道を読み、先手を打って動くことが必要です。駆け引きがより重要になります。それに対し時速10kmはフリーボールに追いつくことができるため、ライン際のボールをキープし次に繋げるなど、攻撃のバリエーションが増えます。また、ゴールに向かって転がるフリーボールを追いかけて押し込むことも可能です。

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17#永岡選手が後方に転がるボールに追いつき、攻撃に転じています。

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このように時速6kmと10kmでは、基本的な戦術の取り方自体が大きく変わってきます。そのため、6kmでプレイしてきた選手たちが10kmに適応するのは並大抵のことではないのです。これらの違いを踏まえた上で、もう一度、各決勝の試合を見直してみてはいかがでしょうか?今までとは全く違った楽しみ方ができると思いますよ!

6km/hカテゴリー決勝・BLACK HAMERS vs バレッツ

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電動車椅子サッカーの魅力が詰まった、横浜・F・マリノスカップ

マリノスカップは、Jリーグ横浜・F・マリノスの協力(今年から主催)で行われていますが、随所に観客を楽しませる趣向が凝らされていました。

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開会式後にはマリノス公式チアリーディングチーム「トリコロールマーメイズ」の華麗な演技の披露があり、チームマスコット「マリノスケ」も頑張っていました。マリノスケのかわいいパフォーマンスには、来場した子供たちも大喜び。

f:id:okina_monkparakeet:20170217225502j:plainマリノスケの頭身だとわりと普通の大きさのサッカーボールに見えるから不思議。また試合の合間には体験会の時間が設けられ、電動車椅子試乗会や選手とのパス交換も。普段はアリーナに降りれない観客にとって、選手と交流もできるし、これは貴重な時間。

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ボールボーイを担当した地元中学校のサッカー部員たちとパス交換する17#永岡選手。小さなボールボーイくん、大きなボールを受け止めきれず、吹っ飛んでいました。

f:id:okina_monkparakeet:20170218023010j:plain来場客とパス交換する10#高林選手。試合の緊張から解放され、笑顔も漏れます。

試合後に観客や関係者、審判に選手も混じっての片付けタイムも、電動車椅子サッカーの大会では見慣れた光景。こういうシーンって、他の競技でもあまり見られないですよね。

f:id:okina_monkparakeet:20170217224721j:plain両手にガムテープのゴミを抱え、頑張るマリノスケ

f:id:okina_monkparakeet:20170217224728j:plainマリノスケ、ガムテープ剥がすの大変そう。指太いもんね。

f:id:okina_monkparakeet:20170217224732j:plainお子様もお手伝い。

f:id:okina_monkparakeet:20170218025813j:plain7#三上選手もお手伝い。

f:id:okina_monkparakeet:20170218030921j:plain気がついたら会場のお客さんたちもみんなで床磨き。みんなの協力が来年のマリノスカップ開催に繋がります。

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ボールボーイのみんなもお疲れさまでした!

さて、マリノスカップも終わり、3月18日には舞台を平塚に移して、日本全国から強豪チームが集結する「ドリームカップ」が開催されます。ドリームカップが開催される頃には7月のアメリカW杯の最終メンバーが出揃い、 いよいよ各チームもエンジンが温まってきます。どんな戦いを見せてくれるのか期待感が膨らみます!

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今回も紹介しきれなかったチームがあります。クローバーズ、グレイズの関係者の皆様、申し訳ありません。またWings、横浜ベイ・ドリームの皆様も、もう少し詳細に取り上げさせていただきたかったのですが、言葉足らず申し訳ありません。

(了)

パラキートのパラスポーツ日記とは

「パラキートのパラスポーツ日記」では、一人の障害者サッカーファン「パラキート」が自分の脚でおもむき、自分の目で観て、自分の耳で捉え、自分の指で撮り、自分の頭で考えたママを発信していきます。

記事を通して、競技を取り巻く人・環境・社会問題に触れ、この魅力的な世界に関心を寄せ、寄り添ってくださる方が増えることを願っています。

プログラム制作・HP管理/「PickPhat(ピックファット)」

『"Pick"=掴み取る、選ぶ」と「"Phat"=格好いい、イカした』を組み合わせた造語を屋号に掲げる「PickPhat」。クライアントの意思を尊重し、選び抜いてイカしたサイトをクライアントと共に作り上げます。代表の加藤高明氏は電動車椅子サッカーチーム「Yokohama BayDream」の選手としても活躍中。

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