- 電動車椅子サッカー
改めて感じた、時速10kmの落とし穴
時速10kmカテゴリはFCクラッシャーズが4年ぶり2度目の優勝。時速6kmカテゴリはBLACK HAMERSが初優勝という結果で幕を閉じたマリノスカップ。表彰式の様子です。








最終順位

国際基準が採用されて初めての公式戦ということもあり、戸惑う選手やチームも多かった印象の今大会。
・早いボールのイレギュラーな動き
・早いパスに追いつけずにボールロスト
・マシンの制動によるミス
試合を見て感じるのはこれらの要因。練習で日常的に時速10kmを経験しているとはいえ、大会という舞台での緊張感や相手選手のディフェンスの動きなど、不確定な要素も加われば当然ゲーム運びも想定通りにはいきません。ただ、これらの要素は慣れてくれば解決できるもの。大会で経験を積み、徐々に精度を高めていけば大きな問題ではありません。
ということで、時速6kmと時速10kmの大きな違いや、それにともなう戦術の変更に少し触れてみたいと思います。ちなみにこれは私感であり、選手によっては違う意見になると思いますが、それで議論が盛り上がると競技力アップにつながるかもしれませんね。
1.競り合いのシーンの変化
電動車椅子サッカーでは、2選手がボールを挟んで競り合うシーンが多く見られます。互いにボールを挟んで移動すると、ボールの動きが止まり膠着状態になるため、競り合いの手を緩めるタイミングがポイントになります。


時速6kmだと膠着状態から抜け出しにくく、そのままラインを割ることも(過去大会からイメージ)
時速6kmでの試合では、そのままライン際までズルズルと移動し、最終的にラインを破る場面が頻繁に起きます。スピードが遅いためボールを外そうとしてもなかなか外れないためで、ラインを破った後は副審の判断に委ねられることになります。なので、攻め手側はラインを割る直前に車体を自陣側に傾け「相手が出したよ!」とアピールすることもあります。もちろんこれも正当な駆け引きです。

対して時速10kmになると、速いスピードで挟まれたボールはイレギュラーな動きをし、もみ合う選手の車体間をすり抜けるケースが増えます。これによりこう着状態が少なくなり、試合にメリハリが生まれます。
↑前後に激しく動くことで、膠着状態の時間が短くなる様子がわかります。

2.コーナーキックからの展開の変化
電動車椅子サッカーでも、コーナーキック(以下CK)からの攻撃は得点チャンスです。ただし時速6kmの試合になると、これも膠着状態を生み出す要因になります。
CKの際、守備側は車体の側面をボールの侵入に対して傾け、ゴールラインもしくはサイドラインに弾き出します。ラインを破れば再びセットプレーから始まるため、守備側は再び同じことをして危機を脱しようとします。つまり、セットプレー→弾き出す→セットプレー→弾き出す…という状態が延々続くことになります。長い時だと5分以上もその状態が続くため、得点が先行しているチームはわざとその状態を作り出し、タイムアップまで逃げ切る作戦を取ることもできます。

もちろんこれも立派な戦術ですが、観ている側にはあまり面白くない展開です。対して時速10kmの場合。回転のスピードも上がるためシュートは勢いを増し、ゴールが決まるチャンスが格段に増えます。またCKを繰り返させるためにゴールラインを割らせることも難しくなるため、CKの危険度も増加。つまり、そもそもCKを相手に取らせないように試合運びをする必要が出てくるわけです。3.ボールに追いつくことによる戦術の広がり
時速6kmではフリーボールに追いつけることはほとんどありません。なので、常にボールの軌道を読み、先手を打って動くことが必要です。駆け引きがより重要になります。それに対し時速10kmはフリーボールに追いつくことができるため、ライン際のボールをキープし次に繋げるなど、攻撃のバリエーションが増えます。また、ゴールに向かって転がるフリーボールを追いかけて押し込むことも可能です。
↑17#永岡選手が後方に転がるボールに追いつき、攻撃に転じています。

このように時速6kmと10kmでは、基本的な戦術の取り方自体が大きく変わってきます。そのため、6kmでプレイしてきた選手たちが10kmに適応するのは並大抵のことではないのです。これらの違いを踏まえた上で、もう一度、各決勝の試合を見直してみてはいかがでしょうか?今までとは全く違った楽しみ方ができると思いますよ!
6km/hカテゴリー決勝・BLACK HAMERS vs バレッツ
電動車椅子サッカーの魅力が詰まった、横浜・F・マリノスカップ
マリノスカップは、Jリーグの横浜・F・マリノスの協力(今年から主催)で行われていますが、随所に観客を楽しませる趣向が凝らされていました。

開会式後にはマリノス公式チアリーディングチーム「トリコロールマーメイズ」の華麗な演技の披露があり、チームマスコット「マリノスケ」も頑張っていました。マリノスケのかわいいパフォーマンスには、来場した子供たちも大喜び。



ボールボーイを担当した地元中学校のサッカー部員たちとパス交換する17#永岡選手。小さなボールボーイくん、大きなボールを受け止めきれず、吹っ飛んでいました。

試合後に観客や関係者、審判に選手も混じっての片付けタイムも、電動車椅子サッカーの大会では見慣れた光景。こういうシーンって、他の競技でもあまり見られないですよね。






ボールボーイのみんなもお疲れさまでした!
さて、マリノスカップも終わり、3月18日には舞台を平塚に移して、日本全国から強豪チームが集結する「ドリームカップ」が開催されます。ドリームカップが開催される頃には7月のアメリカW杯の最終メンバーが出揃い、 いよいよ各チームもエンジンが温まってきます。どんな戦いを見せてくれるのか期待感が膨らみます!
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今回も紹介しきれなかったチームがあります。クローバーズ、グレイズの関係者の皆様、申し訳ありません。またWings、横浜ベイ・ドリームの皆様も、もう少し詳細に取り上げさせていただきたかったのですが、言葉足らず申し訳ありません。
(了)