- 電動車椅子サッカー
決勝の舞台に上がるのはどのチームか
大会は二日目に入り、前日の二回戦で勝ち上がった4チームが、
日本一の座をかけて準決勝で激突します。
会場ではすでに4チームが計測に入り、ウォーミングアップを始めていました。
注目はやはり優勝候補筆頭、レインボー・ソルジャー(北海道・関東2位)
VS 奈良クラブ・ビクトリーロード(関西1位)。関東と関西の盟主同士の激突です。
レインボー・ソルジャーは過去2大会連続優勝。今大会は3連覇がかかっています。
すでに幾度もレインボー・ソルジャーの試合を観戦していますが、パスの正確性、
ポジショニング、そして戦略、どれを取っても別格。圧倒的な存在感を放ちます。
チームの要、10#北沢選手。大会MVP常連のミスター・パワーチェア・サッカー。
そして注目は2回戦ハットトリックの6#内橋翠選手。非常にアグレッシブな選手です。
対する奈良クラブ・ビクトリーロード。
2回戦でWings(中部2位)に大量8点という猛攻を見せた、その攻撃力に注目です。
日本選手権では過去多くの実績を残しながら、ここ5大会はレインボー・ソルジャーに
3度優勝を阻まれています。レインボー・ソルジャー戦は避けて通れない壁なのです。
そして2回戦で怒涛の6点を決めた11#中井皓寛選手。この試合も爆発なるか。
先制はビクトリーロード!
レインボー・ソルジャーのキックオフで前半開始。
小気味好いボールの繋ぎで序盤から攻め立てるレインボー・ソルジャーに対し、
奈良クラブ・ビクトリーロードは3#山田貴大選手をはじめとした積極的な守備で、
その猛攻をいなしていきます。しかし攻撃の手を緩めないレインボー・ソルジャー。
積極的にプレスをかけにいく3#山田選手。
レインボー・ソルジャーのボール支配が続く中、最初に試合を動かしたのは、
劣勢の奈良クラブ・ビクトリーロードでした。前半10分、セットプレーのこぼれ玉を
前目に詰めていた3#山田選手から11#中井選手へとうまく繋ぎ、
振り抜いたボールは一直線にゴールへ!欲しかった先制点をものにします!
次々と39#大代監督の元へ駆け寄る選手達!チーム内のいい雰囲気が伝わってきます。
思わぬ先制を許したレインボー・ソルジャーは、前半の攻勢をさらに強めていきます。
GKポジションで構えていた3#村石彬選手も、セットプレーでは積極的に
相手陣地へ入っていきます。
8#吉沢祐輔選手、10#北沢選手が仕掛けるも、ビクトリーロードは堅い守備で
チャンスを潰していきます。
クラッシュで選手を飛び越えるほど荒ぶり、高く飛び跳ねるボール。
熱を帯びるあまり、11#中井選手がラフプレーで審判から注意を受ける場面も。
まさに白熱の準決勝になっています。
序盤ハイレベルに進んだ前半は、このまま1−0で奈良クラブ・ビクトリーロードが
リードしてハーフタイムを迎えます。
1点を追うレインボー・ソルジャーは後半3分、10#北沢選手のキックインを
8#吉沢選手が車体のサイドで巧みにすらし、待ち構えていた6#内橋選手が
絶妙なコントロールシュート!早い時間で同点に追いつきます。
やはり決めてきた6#内橋選手。冷静な判断が光ります。
そのまま勢いに乗りたいレインボー・ソルジャーですが、
後半に入って動きの良くなった奈良クラブ・ビクトリーロードに攻め込まれるシーンも
増え、前半よりも均衡した試合の流れに、なかなか乗り切れません。
後半も変わらず食らいついていく3#山田選手。試合を通して献身的に守り続けました。
レインボー・ソルジャーはサイドにボールを預け、センタリングか逆サイドにふる、
特徴的な攻めを見せます。しかし容易にパスを通させないビクトリーロード!
10#北沢選手から8#吉沢選手へライン際のパス。吉沢選手が鋭くそれを中へ振るも、
10#木下弘貴選手が食い止めチャンスを作らせません。
攻め手を変えて6#内橋選手がサイドを駆け上がるも15#安井悠馬選手がそれを封じる!
互いに一歩も譲らず、後半20分が瞬く間に過ぎて行きました。
泣いても笑っても、10分後にはどちらかが篩い落とされる延長戦へ…。
徹底的に6#内橋選手に仕事をさせない3#山田選手。凄まじい集中力です。
そして延長後半開始1分でした。ついに試合が動きます。
CKを獲得したレインボーソルジャーは、3#村石選手を自陣に残すも、
決着を急いだのか前掛かった位置取り。その些細な違和感を見逃さなかったのは、
守備で再三ピンチを防いでいた3#山田選手でした。
10#北沢選手のCKは6#内橋選手のもとへ。その打ち損じを11#中井選手が防ぐと、
こぼれ玉を相手陣めがけて思いっきり蹴りこみます!その距離約16m。
自陣に残っていた3#村石選手も前掛かりのポジション。虚をつかれた3#村石選手が
追いすがるも届かず、ボールはゴールへと吸い込まれていきました。
見ていた誰もが(もちろん私も)声を上げた、衝撃的なゴールでした。
レインボー・ソルジャーらしからぬミス、優位に立ったビクトリーロード。
試合はそのままタイムアップを迎え、電光掲示板には2−1の表示が。
ついにレインボー・ソルジャーが決勝を前に敗れ去りました。
待望の勝利で喜びの表情を見せるベンチのスタッフ達と39#大代監督。
チームの緊張を和らげ、鼓舞し、誰よりも怒り、誰よりも喜ぶ。
そんな監督の元だからこそ成し遂げた勝利かもしれません。
レインボー・ソルジャーの攻めはその場にいたすべての人を魅了する、
攻撃的なサッカーでした。しかし、奈良クラブ・ビクトリーロードは執念で
それを上回るパフォーマンスを見せ、それが身を結んだのです。この試合は、
奈良クラブ・ビクトリーロードのクラブ史を書き換える、確かな1歩となりました。
試合後、レインボー・ソルジャーのサポーターが一斉に声を上げます。
「ビクトリーロード!ビクトリーロード!ビクトリーロード!」
それは勝利にふさわしい試合をしたビクトリーロードへの敬意の声であり、
来年、再び決着をつけよう!という誓いの声のようにも聞こえました。
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準決勝 (A コート)RESULT
奈良クラブ・ビクトリーロード(関西1位)2 VS 1 レインボー・ソルジャー
(北海道・関東2位)
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⑥へ続く