- 電動車椅子サッカー
決戦の地、大阪・舞洲へ
10月22日AM7:30。
薄曇りの中、妙な底冷えは海沿いだからか、緊張からくるものか…。
夜明けから少し時間が経った頃、私たちは大阪の街にいました。
…遡ること7時間前。
「横浜クラッカーズ」の応援団長とチームスタッフのお二人のご厚意で
大阪への自動車に便乗させていただくことになったパラキート。
3人を乗せた車は日付が変わると同時に横浜を出発です。
すでに軽い緊張感と高揚感が漂う車中では、
会話も途切れることなく終始賑やかなムードでした。
これから大会で巻き起こる波乱など、想像する余地もなく……。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンからほど近い臨海地区。
若干、緊張感を削ぐようなファンシーな建物(ゴミ処理施設)に囲まれた一角に、
決戦の地「アミティ舞洲」はありました。
日本電動車椅子サッカー選手権は、2015年5月から各地で行われている
全国7ブロックの予選大会を勝ち抜いた15チームと、開催ブロック枠(関西)の
1チームを合わせた計16チームで日本一の頂点を争う大会です。
各チームと選手たちは、目標をこの大会に定めてほぼ1年の間、
それぞれ調整や練習、体調の維持管理を行ってきました。
この2日間で、その全てを出し切って激突することになります。
今回帯同させていただいた横浜クラッカーズは2011年に初優勝を飾り、
2013年に2度目の優勝を果たした強豪ですが、
前回大会はベスト4で悔しい思いをしています。
今年5月の北海道・関東ブロックの予選は、
同じ関東の常勝チーム、レインボー・ソルジャーを下し、1位で突破。
3度目の栄冠を手にして、前回大会の雪辱を晴らすことが今大会の目標です。
もう一つの見どころは、来年7月に開催されるW杯アメリカ大会を目前に控え、
全国から日本代表候補が集結する最後の大会であるということ。
ハイレベルなプレイを間近で見ることのできる貴重なチャンスなのです。
すでに会場では11時の開幕に向けて着々と準備が始まっており、
私たちの緊張の度合いもどんどん増していきます。
自分も結局、車のなかでほとんど寝付けないまま、その時を迎えました。
クラッカーズカットとチームジャージで気合いみなぎるクラッカーズ応援団長。
いよいよ開幕!
私たちが会場に入ったのはAM9:15。
会場は慌ただしく設営に追われ、選手・スタッフは器材のメンテナンスや
体調チェックに余念がありません。
私も10:00の開会式に間に合うように取材申請を確認してもらい、
「報道ビブス」と証明証を受け取ります。
そう、実はパラキート、正式な取材申請を経て報道ビブスを身につけるのは
これが初めてでした。その嬉しさはちょっと格別。
その浮かれ気分が、このあと大きなアクシデントを引き起こす原因になるのですが…。
玄関前に看板が設置されるなど、慌ただしく準備が進みます。
報道ビブス。これがあれば安心して撮影に集中できます!
アリーナに向かう通路は、全長15mほどの長く広い緩やかなスロープ。
車椅子2台がゆとりを持ってすれ違えるバリアフリー設計です。
そしてアリーナの入り口やトイレの入り口では音声ガイダンスが。
こちらはより使いやすく、また車椅子で自主的に動ける範囲が広い印象を受けました。
そして受付の方がとても親切で丁寧だったのが印象的でした。
大阪の気質なのかもしれませんね。
「ここは、アリーナ入り口です」という自動音声ガイダンスが流れます。
広々としたアリーナには、すでに選手達が到着していました。
選手には基本的に介助者が同伴するため、アリーナ内はかなりの人数であふれます。
旧交を暖める選手、感慨に浸る選手、そして早くもミーティングを始め、
気合いを入れるチームスタッフなど、そこにはたくさんの表情がありました。
時刻は10:30。いよいよ開会式です!
開会宣言と黙祷と
16チームすべての電動車椅子が一堂に会する姿は圧巻そのもの。
各チームのサポーター、チームスタッフ、家族や介助者が見守る中、
開会式が始まりました。
吉野忠則JPFA会長の開会挨拶に始まり、
前回覇者のレインボー・ソルジャーからトロフィーが返還されると、
昨年の勝者も敗者も全て精算され、皆同じスタートラインに立ちました。
そして、黙祷。
明らかに会場の空気が変わった瞬間でした。
これは毎回大会で行われているセレモニー。
前回大会からの一年間で亡くなった選手たちの名前が、
チームごとに紹介されていきます。
電動車椅子の選手の中には、筋ジストロフィーや脊髄性筋萎縮症など、
重度の進行性疾患を持っている方も多くいます。
一般的に平均寿命が通常よりも短いとされるこれらの重度疾患の場合、
若くして亡くなられる選手も多いのです。
ただ、ドリームカップ、関東予選、関東大会では見られなかったシーンに、
亡くなった選手の数の多さに、私は少なからず動揺を隠せませんでした。
そしてその時初めて、手にもつカメラの重みとともに、
この大会を写真として記録することの重みと意義の大きさを感じたのです。
選手宣誓は大会実行委員長の3#小林飛翔選手(SONIC〜京都電動蹴球団)。
健康で、選手としてサッカーをすることができる喜びを言葉に込めて、
選手宣誓が読み上げられました。
大勢のスタッフ、サポーター、そして選手たちが、大会への善戦を心に誓います。
緊張感漲るクラッカーズの選手たち。
さあ、いよいよ第一試合。
横浜クラッカーズVS横浜ベイ・ドリーム戦、
同じ横浜のライバル同士がぶつかり合う開幕戦が始まります!!
②へ続く